『ブギウギ』にも“家族の時間”の象徴として登場 銭湯が物語に欠かせない理由とは

『ブギウギ』銭湯が物語で果たす役割とは

 それは、銭湯を営む家族の内側に焦点を当て、銭湯を“家族のシンボル”として描写する方法だ。『湯を沸かすほどの熱い愛』では、夫の一浩(オダギリジョー)と双葉(宮沢りえ)が経営する「幸の湯」が登場する。このように、家族が一丸となって繋げてきた歴史を感じさせる場所として、作中で銭湯が機能するケースは多い。『ブギウギ』第21話で、スズ子はツヤ(水川あさみ)、梅吉(柳葉敏郎)、六郎(黒崎煌代)と血のつながりがないことに気がついてしまった。だがスズ子にとっての“家族の時間”とは、「はな湯」でツヤたちと過ごす笑顔あふれるひと時だったのではないか。

『ブギウギ』傷心のスズ子に寄り添う六郎の姉弟愛 ツヤの「おかえり」が優しく包み込む

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』において、治郎丸家で女中をしていたキヌ(中越典子)がスズ子(趣里)の本当の母親であることが明らか…

 また、温浴業界といえば昨今のサウナブームの盛り上がりが思い浮かぶが、それにもかかわらず、後継者問題などで店を閉めざるを得ない銭湯が相次いでいる。このような今まで培ってきた歴史の“終わり”と背中合わせにある危機感も、エンタメにおいて銭湯が舞台に選ばれる理由なのかもしれない。

 さらに、銭湯では裸になるということがやはり特徴的で、「嘘と本音」「暴露・吐露」を軸に物語を進める手段もある。『アンダーカレント』では、主人公のかなえ(真木ようこ)が、行方不明になった夫の「嘘」に向き合っていく。それだけでなく、かなえが封じていた幼少期の記憶と浴槽の中で繋がるシーンには、思い出したくないものと自身をリンクさせてしまうような“懐かしさ”が引き起こす、不思議な力を銭湯に感じた。

 『ブギウギ』の「はな湯」という舞台は、単にモデルとなった笠置シヅ子の実話に基づいているだけでなく、物語の装置としての役割を果たしていることがわかる。スズ子にとって、「はな湯」はどんな場所だったのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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