『トンソン荘事件の記録』は明るいうちに! 夜に観たら眠れなくなる恐怖の連続攻撃

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、「スリザリンは嫌だ」石井が『トンソン荘事件の記録』をプッシュします。

『トンソン荘事件の記録』

 一年に一度のお祭りであるプロ野球ドラフト会議が終わりました。ドラフト1位指名選手は、指名が重複した場合はくじ引きで進路先が決まってしまうという、傍から見る分には最高に楽しいエンタメも、当事者の方々のストレスたるや想像以上のものでしょう。まさに「スリザリンは嫌だ」状況です。とにもかくにも、今年も指名された皆様、おめでとうございます。そんなめでたい翌日に、嬉しい楽しい気持ちを吹き飛ばす映画が公開されました。韓国映画『トンソン荘事件の記録』です。

 リアルサウンド映画部の編集員として、映画の宣伝会社から届いた新作映画の情報をニュースとして記事化する業務を日々行っています。そんな日常業務に「ニュース」の状態から負のオーラを持ち込んできていたのがこの映画です。

 ジャンルは完全に「ホラー」。ただ、ホラーと一口に言っても、コメディと紙一重のみんなで楽しむ「バカ映画」系もあれば、「サスペンス」に近いものものなど、一括りにはできないほどバリエーションに富んでいます。そんなホラージャンルの中でも一番厄介なのが、本作のようなフェイクドキュメンタリー形式のもの。いくらフィクションとわかっていても、馴染みのない場所(韓国)かつ、馴染みのない俳優たちということで、ただただ“本物”に巻き込まれていくようにしかみえません。本当に勘弁してほしいです。

 殺人事件の一部始終が収められたビデオに映った“あるもの”を追って、取材班が調査をする過程を追う。取材班は案の定、日常が蝕まれていき……というのが本作のあらすじです。

 「殺人事件の一部始終が収められたビデオ」なんて残しておくなよとしか言えないですし、「そもそも追うなよ!」という話です。この記事のメイン写真をはじめ、各種の場面写真、本作の公式サイトの設計に至るまで、とにかく嫌な怖さが溢れています。

 お化けとか、猟奇殺人鬼とか、ある種人非ざる者であれば、どこか距離が感じられると思うのですが、本作は“ありそう”が徹底され過ぎています。がゆえに、自分の持っている何気ないアイテムから、自宅の鏡、人がいない夜道まで、本作を観た後では、すべてが“それっぽく”感じられるようになってしまいます。

 フィクションが日常に侵食していくのは、いい映画の証拠とも言えますが、こんなんたまったもんじゃないです。観たことを後悔しつつも、多くの人にこの思いを味わってほしいと思っている時点で、自分も本作の映像に毒されているのかもしれません。

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