『ブギウギ』『らんまん』『ウェルかめ』 四国は朝ドラに“ときめき”をもたらす舞台に

 大和(蒼井優)と橘(翼和希)がUSKを退所するにまで至った「桃色争議」から1年後、スズ子(趣里)の家へ、生まれ故郷・香川からの葉書が届く。朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)の舞台は一度、四国・香川へと移る。

 

 四国は、倉科カナが主演を務めた『ウェルかめ』で徳島が、神木隆之介が主演を務めた『らんまん』で高知が朝ドラの舞台となっている。個人的な思い出話になってしまうが、筆者は日本各地を旅する中で、学生時代に約1週間かけて、青春18きっぷを使って四国一周旅行を敢行したことがある。四国はそれぞれの県がどこも自然豊かでゆったりとした時間が流れていた。ふらりと入った居酒屋で地元で取れるという魚をおつまみにしながら、若輩者の私は、その場に居合わせた人から、「こうすれば出世する!」というその人なりのノウハウや「こういう人と結婚した方がいい!」などのアドバイスを聞いて、地酒を飲みながら楽しく笑っていたのが懐かしい。アドバイスはだいたい役に立たなかったことを含めてよい旅の思い出だ。

『ブギウギ』草彅剛が軽快なスキャットで登場 香川への旅はスズ子に何をもたらす?

「ババッ、ババッ、ババッ、ババッ、ババッダァ〜ッツ、ダァッ!」  草彅剛の軽快なスキャットで始まった『ブギウギ』(NHK総合)…

 徳島市は、街の中心部を大きな川が流れていて、そこを、遠くになだらかに鎮座している眉山を眺めながら船で下ることができた。山と空と揺れる水面。なんだか船の上で大の字になったような開放感を味わったことを覚えている。『ウェルかめ』では倉科演じる波美が、ちょっと好意を寄せている勝乃新(大東駿介)を眉山デートに誘う場面がある。波美はウミガメが産卵に訪れる海岸のある徳島県美波町で生まれ育つが、小さいころに噛まれそうになったことで、ウミガメ嫌いに。だが、地元雑誌の取材で、ひたむきなウミガメ飼育員と出会ったことをきっかけにそれを克服すると、カメを通して故郷を良さを再発見し、「ウェルかめ」という地域雑誌を発刊するに至っている。

 筆者は高知へ向かうときは、香川からローカル鉄道を使って向かった。主に山の中をずっと走っており、標高が高いところは、険しい斜面を上るためジグザグに敷かれた線路を走るスイッチバックによって進んで行った。淡々と走る都会の電車とは違って、ゆったり止まったかと思うと反対方向に少し進み、また止まって、反対に進むを繰り返す車両。本当に進んでいるのかドキドキしたことを覚えている。ただ、進んでいくたびに夏の日差しを柔らかにしてくれている木々の緑が濃くなって、空気が澄んでいくような気がした。神木が植物学者・万太郎を演じた『らんまん』では、幼少期の万太郎が木々が生い茂る裏山で「天狗」こと坂本龍馬(ディーン・フジオカ)に出会っている。少し幻想的な出会い方であるが、もしかしたらそんなことが起こるかもという気持ちにさせてくれる神秘さが高知の自然の中にはあった。

『らんまん』の根幹にある“名前を知る”という大テーマ 出色の出来だった「高知編」

「道がのうても進むがじゃ。わしらが道を作りますき」  『らんまん』(NHK総合)「高知編」が、第5週「キツネノカミソリ」をもっ…

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