宇野維正の興行ランキング一刀両断!

『ザ・クリエイター』興収1位も伸び悩む 米映画俳優組合ストライキの影響は続く

 10月第4週の動員ランキングは、1ヵ月限定の『ONE PIECE FILM RED』のアンコール上映が1位に。週末3日間の成績は動員12万2000人、興収1億5900万円。一応、4Kアップコンバート版、リテイク特別版、歓声&応援&拍手&サイリウム持参OKの「ウタLIVEin映画館(応援上映)」開催、「チョッパーの応援ガイド副音声付き上映」開催という口実はあるものの、このタイミングでアンコール上映が決定(発表されたのはちょうど公開から1年後の8月6日)した理由を推測するなら、一つはこの秋の東映配給作品のラインナップが手薄だったこと。もう一つは、この機会に東映配給作品としては前人未到の興収200億円の大台にのせたかったのだろう。これで累計成績は動員1440万人、興収198億7100万円となった。

 というわけで、国内映画興行における大ヒット作とそれ以外の作品の格差、及びイベント化した大ヒット作への依存もここまできたか、という現象ではあるが、先日ようやく暫定合意に達した全米脚本家組合ストライキ、現在も続行中の米映画俳優組合ストライキの影響で、少なくともこの先2年近くハリウッド映画の公開本数そのものがさらに減少していくことが予想される。今後もそれを埋めるようなかたちで、興行サイドの要請も後押しして、このような公開から1年以上過ぎた大ヒット作(そのほとんどは国内アニメーション作品となるが)のアンコール上映が常態化していくのではないだろうか。

 ラージフォーマット上映の多さもあって興収ランキングで初登場1位となったのは、ギャレス・エドワーズ監督の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』以来約7年ぶりの新作『ザ・クリエイター/創造者』。オープニング3日間の動員は10万3000人、興収は1億6400万円。監督はストライキの影響なく作品のプロモーション活動ができるということで、ギャレス・エドワーズ監督が来日して各メディアでプロモーションに励んだわけだが、ハリウッド発の久々のオリジナルSF大作としては少々物足りない出足となった。

 『ザ・クリエイター/創造者』には、ギャレス・エドワーズ作品としては2014年公開の『GODZILLA ゴジラ』に続いて渡辺謙が出演しているが、今回渡辺謙が作品のプロモーションで表立って活動できなかった理由は、彼も所属する米映画俳優組合が現在もストライキ中だからだろう。『ラスト サムライ』(2003年)や『インセプション』(2010年)の頃のように、渡辺謙がプロモーション稼働することによって日本での興収が大きく嵩上げされることは今回の場合なかったかもしれないが、『ザ・クリエイター/創造者』の興行にも少なからず影響はあったに違いない。

■公開情報
『ザ・クリエイター/創造者』
全国公開中
監督・脚本:ギャレス・エドワーズ
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、渡辺謙、ジェンマ・チャン、アリソン・ジャネイ、マデリン・ユナ・ヴォイルズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 20th Century Studios

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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