『ブギウギ』蒼井優が体現する厳しさの中の優しさ 梅丸少女歌劇団を率いる大和礼子の魅力

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の第2週で、私たちはミステリアスな大和礼子(蒼井優)の素顔に少し迫ることができた。

 鈴子(澤井梨丘)の研究生としての日々が始まり、同期の白川幸子(小南希良梨)と桜庭辰美(木村湖音)の不仲を取り持ちながら切磋琢磨していった第2週「笑う角には福来る」。鈴子たちは、目上の人間に対する話し方から姿勢など、厳しいように描かれているがマナーとしては当たり前のことをしっかり叩き込まれていた。しかし、研究生の数は日に日に減ってしまい、ついに残った鈴子と白川と桜庭の3人も大喧嘩をしてしまう。鈴子は白川と仲良くやっていたが、桜庭のことをずっと気にかけつつ、また“お節介”を働いてしまった時にすぐ自分で気づいて反省する精神的な成長が印象深かった。

 そんな彼女の歌劇団デビューの炎に火をつけたのは、他でもない憧れの先輩・大和である。彼女は第8話まで一切話すことがなかった。それなのに、ずっと物語の中に大きな存在感を感じさせるキャラクターだったのだ。何を考えているのかわからない、ミステリアスな第一印象があり、ところどころ厳しそうな一面も垣間見せていた。鈴子に初めて口を聞いた時もキツそうな雰囲気もあったが、その奥からは確固たるプロフェッショナルな姿勢、そして厳しいからこその優しさが感じられた。

「お客様はね、現実から離れたくて劇場にいらしているの。そのお客様に私たちは一瞬でも現実を感じさせちゃだめ」

 研究生が舞台の小物を用意しなければいけない中、白川が橘アオイ(翼和希)の羽を忘れてしまった件でこっぴどく叱られた鈴子たち。一人でいる大和の姿を見つけた鈴子は、彼女にも今回の件で謝罪をした。そんな鈴子に大和は誰が迷惑を被ったのは橘ではなく、自分たちの踊りをいつも楽しみにしてくれるお客さんだと静かに説いた大和からは、ワンオブトップの覇気が感じられる。

 実際、舞台での彼女は優雅さそのものだが、毎日のように劇の後にも一人で鏡を見て踊りを練習する“努力の人”なのだ。「あなた、どうして踊るの?」と鈴子に聞いた時、彼女が富や名声を一切考えずに、迷うことなく当たり前のトーンで「踊りたいから」と即答したことにも笑みをもらしていた。そして自主練をしようとする彼女の足に豆ができているのを見て、より空気が温和になったように感じる。大和は怖そうに見えて、頑張りはちゃんと評価するカッコいい先輩だった。その空気感を蒼井優は、絶大な存在感と共に繊細に体現している。

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