『いちばんすきな花』前評判を裏切らない繊細さに心を奪われる 4人の会話劇で得る気づき
では、1対1を望まずに、常に付かず離れずの人間関係を築くことが幸せなのだろうか。ゆくえの幼なじみでもある紅葉(神尾楓珠)は、いつも多くのグループに属しているように見える。だが、その本音を聞くと「嫌われているわけじゃないけど、誰も好んで自分のことを選ばないし。興味すら持たれないからいじめられもしないし。いてもいなくても同じで、いると便利なときだけ使われる」と寂しそうな表情を浮かべる。誰でもいいから必要とされたくて動いているのに、誰にも引っかからない。それは、ゆくえのように唯一無二の存在を失うことはないかもしれないけれど、そもそも得ることもできないということなのかもしれない。
自分のいちばん好きな人に、「いちばん好きだ」と選ばれて、2人組になるということ。それがすごくシンプルに見えて、なかなかうまくいかないのは現実を生きる私たちも痛感していることだろう。そんな「1人」にこぼれてしまった4人が偶然出会うことになる。彼らはこのメンバーで友情を育もうとか、ましてや男女の仲になろうとか、そんな期待が一切ない。むしろ“きっともう二度とこのメンツで会うこともないだろう“という後腐れなさが、率直な意見交換を生む。それはまるで直接会ってはいるけれど、名前も素性も知らないSNSでのやりとりのような自由さが漂っていた。
そんな名前のつけられない集合体だからこそ、フラットな視点で人生を少しだけ変えるような言葉が紡がれていく予感がする。こう見られたいという虚栄とか、こう見られているんだろうなという警戒心とか、日常生活を共有していれば自然に生まれてしまうノイズを抜きにした話し合いが見られるのはとても興味深いものだ。4人の会話劇を通じて、なにか新しい気づきが得られるのではないかと、嬉しくなってしまうドラマのはじまりだった。
■放送情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
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