吉岡里帆はバランス感覚に長けた役者だ 『時をかけるな、恋人たち』では新分野を開拓?

「人生、チョロかった! アハハハハッ!」

 2017年放送のドラマ『カルテット』(TBS系)で、吉岡里帆の演技を見た時の衝撃が、いまだに忘れられない。同作で演じていた来杉有朱は、「こんな女、絶対に近くにいてほしくない……」と思ってしまうようなイかれたキャラクター。ピュアな瞳で相手を見つめたかと思えば、いきなり殺意をむき出しにする。何を考えているか分からない恐ろしさがあり、彼女が出てくるとゾワっとしたのを覚えている。しかし、その恐ろしさが癖になり、だんだんと有朱の登場を待ち焦がれるようになっていったのが不思議だ。

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 吉岡は、癖になる演技ができる役者だと思う。映画『Gメン』(2023年)でも、彼女が演じる高校教師・雨宮瞳の登場シーンを何度もリプレイしたくなった。予告編が上がった時も話題になっていたが、「学校に漫画持ってきちゃダメだぞぉ」とぶりっ子で注意したあと、「ババァ」と言い返されて「誰がババァだよ、この野郎!」と豹変する場面なんかはお腹を抱えて笑ってしまった。『カルテット』で吉岡の演技にハマった人は、ぜひ『Gメン』もチェックしてみてほしい。

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 その一方で、癖を出さずに作品の世界観に溶け込むことができるのも、彼女の強みだ。おそらく、押し引きのバランス感覚に長けているのだと思う。たとえば、2021年放送のドラマ『レンアイ漫画家』(フジテレビ系)で、ヒロイン・久遠あいこを演じていた時のこと。同作の主人公である少女漫画家・刈部清一郎(鈴木亮平)が変わり者だったため、あいこは“ふつう”であることを求められた。すると吉岡は、個性をギリギリまで消して、刈部を引き立てる演技を見せたのだ。そのおかげで、刈部の変わっている部分が浮き彫りとなり、作品の面白さが増すこととなった。

 10月10日にスタートする『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ・フジテレビ系)でも、吉岡は“ふつう”の演技を求められることになるだろう。同作で彼女が演じるのは、アートディレクターの常盤廻。未来からやってきた井浦翔(永山瑛太)と出会い、タイムパトロール隊員になることを命じられる。翔が働くタイムパトロール基地でシーンが繰り広げられていくことも多く、かなりSF要素が強いこの物語。しかも、廻と翔は時をかけて恋に落ちた恋人同士だった……というロマンティックすぎる設定も。吉岡は主演として、どのような方向に導いていくのか。また、数々の名作を彩ってきた永山とのドラマ初共演で起きるであろう化学反応にも期待したい。

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