『何曜日に生まれたの』は私たちに希望を与えてくれた 野島伸司が届けた“1割の素敵なこと”

 その後、公文は瑞貴(若月佑美)から、すいが悠馬(井上祐貴)と付き合い始めたという話を聞きつける。気になって思わず、すいのスマホに仕掛けた盗聴器を手に取る公文。イヤホンの向こうから聞こえるのは、悠馬が“ホントの海”ですいにプロポーズする、公文が描いた物語のラストをなぞろうとする2人の甘い会話だ。しかし、それは公文がまだ自分を少しでも好きでいてくれる可能性を信じて、すいが仕組んだサプライズだった。

 まんまと罠に引っかかった公文は堪忍し、すいと共に二次元から脱却してリアルの世界へ。冷酷な天才作家・公文竜炎から、三島公平に戻った彼が何も取り繕うことのできないホントの海ですいとはしゃぐラストシーンはこの上なく多幸感に溢れている。「何曜日に生まれたの?」は会話の糸口であり、人と人が関係を築く上での第一歩。その一言から始まったすいと公文の鮮烈なピュアラブと、10年ぶりに再会し、新たな関係を構築した同級生たちの青春物語を描くことで、本作は私たちに希望を与えてくれた。

 不器用ながらも揺るぎない強さを持ったすいを好演した主演の飯豊まりえ、一枚皮をはいだ先にある公文の弱さと優しさを繊細に表現した溝端淳平はもちろんのこと、若月佑美、井上祐貴、YU、濱正悟ら一人ひとりの俳優が深い解釈を持って野島伸司の複雑難解な脚本に花を添えた。この物語は、公文の劇中の台詞にもあったように、衝撃とともに長く人々の記憶に残ることだろう。人と関わることが怖くなってしまった時は、本作のラストを思い出して「何曜日に生まれたの?」と少し勇気を振り絞って声をかけてみたい。

■配信情報
『何曜日に生まれたの』
TVer、ABEMA、TELASA、U-NEXTにて配信中
出演:飯豊まりえ、溝端淳平、井上祐貴、YU、若月佑美、片山友希、濱正悟、白石聖、早見あかり、シシド・カフカ、陣内孝則ほか 
脚本:野島伸司
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:南雄大、松原浩、柴田裕基、難波利昭
制作プロデューサー:奈良井正巳
演出:大塚恭司、岩本仁志、松原浩
音楽:福廣秀一朗
主題歌:The Hollies「Bus Stop」
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/nanuma/
公式X(旧Twitter):@nan_uma_abc 
公式Instagram:@nan_uma_abc
公式TikTok:@nan_uma_abc

関連記事