『アントニオ猪木をさがして』は日々を生きる“私たち”の映画だ! 希望を生み出す闘魂魂

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、初めてプロレスを観戦した試合のメインイベントが内藤哲也VSオカダカズチカだった橋本が『アントニオ猪木をさがして』をプッシュします。

『アントニオ猪木をさがして』

 10代の頃からの友人がプロレスオタクで、今ではプロレス仲間たちと定期的にプロレスと音楽をコンセプトにしたイベントを開催しているほどのプロレス好きがいる。そんな友達にプロレス話を聞かされ、中途半端な知識がある私が今作を観ていた時、無意識に作品内で語られたアントニオ猪木の名言を口に出していたことに気がついた。特に「闘魂」という言葉の意味を考えた。今作はアントニオ猪木とは一体何と戦っていたのか、その尋常じゃない発想力、人間としての魅力を堪能できる映画となっている。

 本作はドキュメンタリー映画であるが、いわゆるドキュメンタリー作品で想像するような、証言を集めたものとは違う。構成が特殊なのだ。この作品は大きく言うと、ドキュメンタリーパート、ファン視点から描かれる短編映画作品、アーカイブ映像やスチールなど、3つのパートでできている。

 特に重要な役割を担うのが、有田哲平(芸人)、神田伯山(講談師)、安田顕(俳優)の3人だ。この3人の役割が非常に大きい。有田は棚橋弘至(プロレスラー)と、安田は原悦生(写真家)と対談をしている。そこで語られる話はプロレスファンだからこそ聞ける話であったり、実際にアントニオ猪木を観て育った強烈な思いがあるからこその話だった。伯山はアントニオ猪木VSマサ斎藤の巌流島決戦の当時の様子を、実際の巌流島で講談として披露している。

 専門家、プロレス関係者ではない3人が物語を展開をしてくれるおかげで、今までアントニオ猪木のことをあまり知らなかった人でも楽しむことができるところまで観客を迎えに来てくれる。自分の知識量を気にせず映画を観ることができるのだ。もちろんプロレスファンも楽しめる。例えば、棚橋が話す、実際に経験した「猪木問答」について、自ら新日本プロレスの道場に掲げてあった猪木のパネルを外した時のエピソードなどを振り返り、今だからこそ語れる話の答えを聞くことができる。

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