日本テレビがスタジオジブリを子会社化 宮﨑駿の制作意欲とTVシリーズの可能性が明らかに

日テレがスタジオジブリを子会社化

 ここで気になるのが、後継者問題を株式譲渡の理由にしたスタジオジブリの今後の制作体制だが、鈴木によれば、10年ぶりの長編アニメーションとなる『君たちはどう生きるか』を公開した宮﨑駿が、興行成績を強く気にしており、「支持してくれる人がいるなら、企画までは考えてもいいと謙虚に言っている」という。加えて、「企画だけではなく、本当は自分で作りたい人。死ぬまでやりたい人」とも話して、宮﨑駿に今も強い制作意欲があることを紹介した。

 日テレでも、株式を取得する以上、スタジオジブリが過去の作品の版権収入だけを目的にするのではなく、新しい作品を作っていくことに強い期待を示しており、杉山会長は、「大いに経営に関与して、最大限に応援していきたい」と前向きな姿勢を見せた。一方で、既存のコンテンツを活かしたイベントも展開し、ジブリが持つコンテンツの価値を高めていくことも話していた。

杉山美邦
杉山美邦

 宮﨑駿に制作意欲はあっても、継続的な作品を送り出していかなければ、アニメーションスタジオとしては経営が成り立たない。一時、制作部門を閉鎖した際には過去の作品を活用した経営に切り替えていくことも考えているようだったが、『君たちはどう生きるか』で新たに制作体制を整えた以上、今後も継続的に作品を作っていきたい意向だという。鈴木は「ジブリは世界でも珍しい、映画しか作らない会社だが、そういった考え方を誰かがどこかで変えてほしい」と発言した。

 「そのためには、TVシリーズだと思っている。若い人たちに機会を与えて秀作を作ってもらう」とも話した鈴木。宮﨑駿監督作や高畑勲監督作のような作家性を前面に打ち出した作品ではなく、若い人が企画力によって立ち上げたTVシリーズを制作し、日テレで提供していくような展開を、今後は行っていく可能性を示唆した。

鈴木敏夫
鈴木敏夫

 この時期の株式譲渡について、『君たちはどう生きるか』の興行成績がふるわず、救済の意味合いもあるのかといった問いも出たが、鈴木は、「ちゃんと採算がとれました。7年掛けて頑張ってやっても回収できる方法を証明できました」と話して、不振の噂を否定した。今後公開されていく海外からの引き合いが好調とのことで、映画祭における賞レースでも名前が挙がることが期待できそうだ。

 さらに鈴木が「代表取締役議長」という役職で、子会社化後の日テレの経営に携わることについては、以前に『風の谷のナウシカ』の放送権を買い、その後も出資などをしてスタジオジブリを応援してきた日テレの氏家齋一郎会長が、「議長」の役職にあったことを例として挙げ、その肩書きを継いだことを話した。

 氏家会長はスタジオジブリの創設に深く関わった徳間書店の徳間康快社長と同じ読売新聞の出身で、深い関係があったことからスタジオジブリを積極的に支援してきた。「議長」の肩書きは、鈴木やスタジオジブリの氏家会長への思いが表れたものとも言えそうだ。

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