劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』がいよいよ終映を迎えようとしている。4月14日の公開から5カ月以上続いたロングラン上映の終わりに向けて、特別企画「ブラッククロージング」の実施が決定した。中でも注目したい企画は、日本テレビ系『金曜ロードショー』での劇場版過去作の2週連続放送だろう。今回は『黒鉄の魚影』でもその暗躍ぶりに注目が集まった黒の組織にまつわる過去の劇場版作品が放送される。終映に向かう『黒鉄の魚影』をより立体的に楽しむためには必見の企画と言えるだろう。本稿では、9月15日21時から放送の『天国へのカウントダウン』について紹介したい。

　西多摩市に新しく建設されたツインタワービルに、オープンに先駆けて招待されたコナン達。ビルには黒の組織のメンバーであるジンの愛車・黒のポルシェが駐車されていた。ジンの目論見を訝しむコナンであったが、やがてビルのオーナーである常盤美緒に関わりの深い者たちが次々に殺害され始める。そんな中、ビルのオープン記念パーティーが開催され……。

　本作の見どころはやはり黒の組織の暗躍ぶりだ。劇場版シリーズに本作で初登場した黒の組織。言うなればこの『天国へのカウントダウン』は黒の組織が劇場版に登場する流れを確立した作品であり、同じく黒の組織がストーリーの軸となる『黒鉄の魚影』も本作があったからこそ生まれた作品と言っても過言ではないだろう。当時は組織のメンバーがジン、ウォッカしか登場していなかったこともあり、現在とはまたひと味違う組織を味わうことができる。容赦なくビルを爆破し、組織に不都合な人間を誰にも悟られることなく殺めようと画策するジンやウォッカの冷酷さはその後の作品にも通じるものがある。

　本作で印象深いシーンといえば、物語終盤に爆発したツインタワービルから脱出するために蘭とコナンがビルから飛び降りるシーンだろう。ビルが炎に包まれ崩壊する中、文字通り命懸けでコナンと共に脱出を図る蘭。コナンシリーズでは勇敢に悪と立ち向かってきた蘭だが、この時ばかりは感じている恐怖を発露する。そんな中で蘭はなぜ常に恐怖に打ち勝ち、勇気を出し続けることができるのか、その理由が描かれる。その後のアニメ本編や劇場版作品における蘭の活躍ぶり、特に『黒鉄の魚影』における黒の組織メンバーとの果敢な戦闘も、本作を観ることでまた見応えが変わるはずだ。