『転職の魔王様』成田凌が示した究極の優しさ 白洲迅とフリーランスの転職めぐって対決

 『転職の魔王様』(カンテレ・フジテレビ系)第8話では、“魔王”来栖(成田凌)の前に強力なライバルが現れた。

 第8話で千晴(小芝風花)が担当したのは石岡遥太(飯島寛騎)である。石岡はフリーランスのライターだが、ここ数年はライター業を休んでおり、30歳を前にして正社員の道を模索していた。石岡が依頼した転職エージェントは、シェパードキャリアともう一社。競合のキャリアアドバイザーと対面した千晴は固まってしまう。相手はよく見知った顔だった。

 川沿いのベンチで出会った青年。爽やかな風貌の彼は笑みを絶やさず、千晴の話を聞いてくれた。来栖に会ってみたいと話していた理由は、天間(白洲迅)自身がキャリアアドバイザーだったからだ。品定めするように千晴たちと天間を天秤にかける石岡を前に、来栖と天間はそれぞれの持ち味を発揮する。北風と太陽という言葉が頭をよぎった。平常運転の冷淡な魔王に対して、“天使”の天間は石岡を受容し、やる気を引き出すことで巧みに導く。その甲斐あって、石岡は「ほっとニュース」への内定を得ることができた。太陽の勝利である。

 特定の会社に所属せず、業務単位で仕事を受注して働くのがフリーランスだ。筆者もその一人だが、第8話は個人的に身につまされる話だった。フリーランスというと自由に働き方を決められるイメージがあるが、実態はさまざまである。自由度が高いことは、それだけ働き方やキャリアにも幅があるということで、十分な経験を積んだ上で独立する人もいれば、見切り発車で消去法的にフリーランスとして踏み出す人もいる。

 石岡の場合はどちらかといえば後者で、アルバイトで生計を立てているので、フリーターと言われても仕方ない面もある。その状態で正社員に採用される可能性は、正直言って高くない。だから、石岡が業界大手のメディアから内定をもらえたのは、よほど運が良いと思えたが、実は天間が裏でアシストしていた。結果的にそれが仇になった。

 夢と現実のギャップを埋める方法は、夢に向かって突き抜けるか、現実を見据えて地道に努力するかの二択だ。天間の手法は前者に近くて、ポジティブな面を強調することで、求職者と企業をマッチングさせる。キャリアアドバイザー自ら職場へ足を運び、親身になって求職者の要望に応える。申し分のない理想的なサポートには欠陥があった。受け入れ側の企業が期待値を上げすぎてしまうのだ。

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