実写版『ONE PIECE』アニメ声優の吹き替えは大成功 要点はリアルな人間へのチューニング

 元々ハイテンションな声でお馴染みのバギーだが、今回は演者のジェフ・ワードが演じる狂気的なピエロの笑顔に合わせてか、どことなく『バットマン』の悪役・ジョーカーのような歪さのある“ピエロ感”が千葉の声からも感じられた。「俺の鼻を馬鹿にするのか?」とルフィーに迫るバギーの台詞には、怒りの着火点がわからないような危うさが漂う。そもそもピエロという存在自体が、実写での派手なメイクや人が「おどける」行為の不気味さとの相性が良い。それがバギーの実写化が成功した理由かもしれない。

 さらに、「実写版『ONE PIECE』の吹き替え声優をアニメ版と揃えたい」という強いこだわりは、意外なところにも表れている。アニメの第1話では「海賊A」という脇役ポジションのキャラクターを声優の神谷浩史が演じているのだが、この「海賊A」が実写版『ONE PIECE』にも登場し、神谷が声を担当しているのである。また、神谷は現在アニメ版のトラガルファー・ロー役を演じており、名もなき「海賊A」を演じていた1999年から、積み重ねてきたキャリアの大きさにもグッとくる。このような実写版『ONE PIECE』に対する制作陣の徹底したこだわりには、驚かされるばかりだ。

 実写版『ONE PIECE』は、海賊たちの壮大なスケールの冒険とファンタジー要素を見事に映像化した。もう一歩引いた視点で捉えるなら、今回のドラマ『ONE PIECE』は大規模なアニメ作品で「キャラクターの声のイメージを損なわずに実写版を制作できるか」という大胆な試みに成功したとも言える。そのクオリティの高さは、特殊効果や衣装などの視覚的要素以上に、視聴者の満足度をいかに「声」が握っているのかを実感させられるほどだった。

 アニメファンの中には過去のさまざまな作品で実写化にがっかりした経験を持つ人も多い中、今回の実写版『ONE PIECE』は、アニメの実写化に関する議論に新たな光を差し込んだのではないか。

参考

※ https://encount.press/archives/489067/

■配信情報
Netflixシリーズ『ONE PIECE』
Netflixにて全世界独占配信中
原作&エグゼクティブ・プロデューサー:尾田栄一郎
脚本&ショーランナー&エグゼクティブ・プロデューサー:マット・オーウェンズ、スティーブン・マエダ
キャスト:イニャキ・ゴドイ(モンキー・D・ルフィ)、新田真剣佑(ロロノア・ゾロ)、エミリー・ラッド(ナミ)、ジェイコブ・ロメロ(ウソップ)、タズ・スカイラー(サンジ)、ヴィンセント・リーガン(ガープ)、モーガン・デイヴィス(コビー)、 ジェフ・ウォード(バギー)、マッキンリー・ベルチャー三世(アーロン)、セレステ・ルーツ(カヤ)、エイダン・スコット(ヘルメッポ)、ラングレー・カークウッド(モーガン)、ピーター・ガジオット(シャンクス)、 マイケル・ドーマン(ゴールド・ロジャー)、イリア・アイソレリス・ポーリーノ(アルビダ)、スティーヴン・ウォード(ミホーク)、アレクサンダー・マニアティス(クラハドール)、クレイグ・フェアブラス(ゼフ)、チオマ・ウメアラ(ノジコ)
©尾田栄一郎/集英社

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