『マイ・エレメント』は「不可能なことばかりだった」 プロダクション・デザイナーが語る

「まるで月に着陸するようなもの」それくらい不可能なことばかりだった

ドン・シャンク、ピート・ドクターらによるスタッフ会議の様子

ーー あなたから見た、ピート・ドクター監督の印象を教えてください。

シャンク:ピートとの仕事はとても楽しいものです。僕たちは長年の友人で、僕は彼のことが大好きなのですが、彼は監督としても素晴らしいですし、彼はデザイナーでもあるので、アーティストとしても非常に優れている。だから僕たちはビジュアル面について、すごくいいコミュニケーションを取ることができました。僕がこれまで一緒に仕事をしてきた監督の中には、何を求めているのかを言葉だけで説明する人もいましたが、ピートは僕と一緒にスケッチをするんです。彼が何を求めているのかを明確にビジュアルで見ることができるというのは、僕にとってすごく特別な体験でした。彼の頭の中にあるものをはっきりと見ることができたのです。僕たちはそれをできるだけ、忠実に実現させようとしました。

『マイ・エレメント』のコンセプトアート

ーー今まで関わってきた作品と比べて、『マイ・エレメント』の作業はどれほど大変でしたか?

シャンク:この映画を作るのにはたくさんの段階がありました。初期の頃は、やるべきことや解決すべき問題が山のようにあったんです。こういうキャラクターが出てくる作品に携わったことがありませんでしたし、未知のことだらけでした。この映画を完成させるのは、まるで月に着陸するようなものだとよく言っていました(笑)。それくらい不可能なことばかりだったんです。だから作品が完成したときに、「すごい! 僕たちにできたんだ!」と感動しました。

ドン・シャンク

ーーそれほど大変な作業だったんですね。

シャンク:そうなんです。それに、『マイ・エレメント』はいろんな意味ですごく思い入れがある作品になりました。この映画の製作中にピートは両親を亡くしましたが、僕も1年前に父を亡くしたんです。だから僕は、感情面でこの映画にとても共感することができたのです。アメリカではかつて、ディズニー以外の漫画やアニメーションは、まともな仕事とは考えられていませんでした。ですが、僕の両親はそれでも僕の夢を支えてくれたんです。僕が自分の人生を生きることを、両親がどう許してくれたのかーー。そのように、僕自身とも深いつながりのある作品になりました。

■公開情報
『マイ・エレメント』
全国公開中
監督:ピーター・ソーン
プロデューサー:デニス・リーム
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/my-element

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