『らんまん』佐久間由衣を支える志尊淳の“ひそかな愛” 2組の夫婦の明るい再出発を願って

 ほんの少し前、竹雄は綾とともに新しい酒造りに取り組む中で幸せを実感していた。幼い頃から思い続けてきた綾が妻としてそばにいること。夫として一緒に酒造りに励めること。「幸せじゃのう」と思わず呟いた竹雄の満たされた表情を見た後で、まさかこんな不幸が起きるとは到底思わなかった。だが、従業員に廃業を伝えたその日、彼は変わらぬ笑顔で綾に語りかける。竹雄はこれで幸せが終わってしまったなどと、これっぽちも思っていないのだ。

 道端に咲いたヒメスミレを綾に手渡す竹雄。ヒメスミレには「ささやかな幸せ」「ひそかな愛」といった花言葉がある。万太郎が田邊教授の自宅から戻ったときにヒメスミレを見つけ、「どんなときも花は咲いている」という事実に改めて気づかされたように、下を向いているときにこそ人は普段は見えない「ささやかな幸せ」や「ひそかな愛」に気づけるもの。万太郎や綾が困難に打ちひしがれそうになったとき、それを与えてくれるのは寿恵子と竹雄だ。いつだって前を向けるように、背後から光を当ててくれる。その強さと優しさに見ているこちらも救われる。「たとえ悪いことが起こっても、その先できっとまた笑えるんだから」という、ゆう(山谷花純)の言葉を信じられるのも万太郎のそばに寿恵子、綾のそばに竹雄がいてくれるから。本作におけるゴール(最終回)に向けた、2組の夫婦の再出発を見届けたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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