『らんまん』に橋本さとしが与える影響とは 森有礼は“遊び心”に溢れたキャラクター?
しかし演劇を愛する筆者としては、演劇領域でこそ彼の真価が堪能できるものと思っている。古田新太らを擁するあの劇団☆新感線の元メンバーであり、退団してからも古今東西のビッグタイトルを演劇人として支えてきた。やはり近年での大きな功績といえば、野田秀樹が率いるNODA・MAPの『Q : A Night At The Kabuki』(2019年)とその再演での活躍だろう。松たか子と広瀬すず、上川隆也と志尊淳が“2人1役”を演じ、W・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』と「源平合戦」を下敷きにして、QUEENのアルバム『オペラ座の夜』から野田が得たインスピレーションを演劇作品として立ち上げたものだ。つまりは、とんでもなく複雑な作品である。
同作で橋本が演じたのは実に4役(!)。一人の俳優が複数の役を演じることに関しては野田作品において珍しいことではないのだが、ここまで多くのキャラクターを1人で背負うとなると、やれる俳優はかぎられてくる。それがこの作品では橋本だったわけである。同じ時間と空間を共有する演劇だと、より彼の力の強大さが分かるもの。とにかく、ほかの俳優以上に余裕が感じられるのだ。共演者とやり取りするセリフの間や調子をはじめとし、誰よりもその場を、その瞬間を、楽しんでいるのだと感じる。
『らんまん』で演じる森有礼は、橋本自身のコメントからして“遊び心”に溢れたキャラクターとなるのではないだろうか。いつまでも少年の心を失うことのない万太郎の物語において、そういった人物(=俳優)は貴重である。果たして橋本さとしは、作品のトーンにどこまで影響を与えるのだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK