『転職の魔王様』が問いかける幸せな転職 早見あかりが気付いた“人並み”と違う“正解”

 幸いにも由夏は、正社員として内定をもらうことができた。年収は上がらないけれど、これなら渋井が求める条件も満たすし、気持ちをつなぎとめることもできるはず。ところが渋井は冷淡な反応で、虚しさに駆られた由夏は内定を保留にしたいと申し出た。「私、どうすればいいんですか」と途方に暮れる由夏を、来栖は「あなたがどうするべきかなんて私たちにはわかりません。何が正解かは宇佐美さんが決めるんです」と突き放した。

 来栖は答えをくれない。第1話の千晴もそうだったが、由夏に対しても同じだった。安易な優しさや気休めの言葉をかたくなに拒む塩対応は、魔王の波動のように相談者の防御を無効化する。その代わりに、職務経歴書に現れないその人の内面、求職者自身も意識しなかった本音の部分を引き出す。「誰かに決められた正解はあなたの正解じゃない。自分の意思で決めてください」。それを聞いて、これは女性だけでなく全ての人にとって問題になり得ると気付いた。

 大事なのは自分の人生の舵を握ること。なんとなく人並みでいいやと思っている時、もしかして幸せになることに妥協しているのかもしれない。結婚、出産、子育て、勤務条件、人間関係など、私たちを取り巻く制約条件は数多くあって、現実を考えれば高望みしないのが一番で、目の前にいる人と幸せになれるならそれで十分。たしかにそうだけど、でもそれはあなたの本心? 転職で本当に問われているのは人生を主体的に選び取る決意であり、仕事はその手段であると来栖は伝えていた。

 元ももいろクローバーという肩書は今は昔、早見あかりは女優としてこの10年間で確かな足跡を刻んできた。最近はサブキャラやゲスト枠での出演が目立つが、第2話で演じた仕事とパートナーとの関係に悩む派遣社員は、自身も結婚、出産を経て俳優業に復帰し、現在進行形で仕事と育児の両立に奮闘する早見が歩んだ道程と重なる。仕事とプライベート、その両方に軸足を置いて役柄に昇華する、早見の充実した現在が伝わってくるようだった。

■放送情報
『転職の魔王様』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:成田凌、小芝風花、山口紗弥加、藤原大祐、おいでやす小田、前田公輝、井上翔太、井本彩花、石田ゆり子
原作:『転職の魔王様』『転職の魔王様2.0』額賀澪 (PHP研究所)
脚本:泉澤陽子、小峯裕之
音楽:横山克、橋口佳奈
プロデューサー:萩原崇、石田麻衣、櫻田惇平
監督:堀江貴大、丸谷俊平、保坂昭一
主題歌:milet「Living My Life」(SME Records)
OPENING SONG:LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Monster」(rhythm zone)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/tenshokumao/
公式Twitter:@tenshokumao
公式Instagram:@tenshokumao

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