ジャファル・パナヒ監督作『熊は、いない』9月公開決定 政府の抑圧に負けず極秘に撮影
第23回東京フィルメックスのオープニング作品として上映された、ジャファル・パナヒ監督作『NO BEARS(英題)』が『熊は、いない』の邦題で、9月15日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開されることが決定。あわせて、日本版ポスタービジュアル、予告編、場面写真が公開された。
本作は、長編デビュー作『白い風船』で第48回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞して以来、世界三大映画祭ほか主要映画祭にて高く評価され続けるイランの名匠ジャファル・パナヒ監督の最新作。
市井の人々の日常を通してイラン社会の置かれたリアルな現実を描き続けるも、政府から2010年に“イラン国家の安全を脅かした罪”として20年間の映画制作禁止と出国禁止を言い渡されたパナヒ監督。それでも抑圧に屈せず様々な方法で映画を撮り続け、2010年以降に本作を含めた5本の長編は全て極秘に撮影。あらゆる制約を回避し自身を映画の題材にすることで、ミニマムながら工夫と発想に富んだ豊かな映画を作り続ける、世界で最も勇敢な映画監督として知られている。
『熊は、いない』でパナヒ監督は、イランの村からリモートで映画を撮影する監督役として主演も務める。撮影で滞在していたイランの小さな村で起きたあるトラブルに、監督自身が巻き込まれていくという物語だ。自国イランでは上映禁止となったが、第79回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を獲得した。
国境付近にある小さな村からリモートで助監督レザに指示を出すパナヒ監督。偽造パスポートを使って国外逃亡しようとしている男女の姿をドキュメンタリードラマ映画として撮影していたのだ。さらに滞在先の村では、古いしきたりにより愛し合うことが 許されない恋人たちのトラブルに監督自身が巻き込まれていく。2組の愛し合う男女が迎える、想像を絶する運命とは……。パナヒ監督の目を通してイランの現状が浮き彫りになっていく。
公開された予告編では、イランの村からリモートで映画撮影をするパナヒ監督の姿から始まる。滞在先の村でにこやかに村人たちの写真を撮っている。監督が撮影するドキュメンタリードラマの主人公は、トルコで国外逃亡を考えている若いカップル。偶然にも、監督が滞在する村にも村から逃げたいカップルがいる。やがて監督に不穏な影が忍び寄る。村の男たちは「ある2人の写真を撮っておられたかな?」と訝しげに尋ね、女は暗闇で必死な剣幕で助けを求めてくる。ある“掟”にまつわる出来事に、監督は次第に巻き込まれてしまう。やがて小さな出来事は大きな事件へと発展。村人たちが監督を取り囲み、村人たちが正気を失い殴り合う緊迫シーンが映る。さらにはトルコの映画撮影も難航し、「私たちの人生を撮ると言いましたよね?」とカップルが監督を問いただす事態に。監督を軸に展開する2つのストーリーが交錯し、ラストには「本作完成後、パナヒは逮捕された」という言葉で締めくくられる。
公開された日本版ポスターでは、本作の主人公であるパナヒ監督が、カメラを覗きこみ何かを撮影している姿を捉えている。周囲には民族衣装を身に纏った村の住人や体を寄せ合うカップルなど、監督を囲むように老若男女が集合している。「イランの村で起きた、ある掟にまつわる事件」というキャッチコピーが確認できる。
また、7月14日より全国鑑賞券が発売される。購入特典として、本国ポスターをデザインした特製ポストカードが付属される。
■公開情報
『熊は、いない』
9月15日(金)より 新宿武蔵野館ほか全国順次公開
出演:ジャファル・パナヒ、ナセル・ハシェミ、ヴァヒド・モバセリ、バクティアール・パンジェイ、ミナ・カヴァニ・ナルジェス・デララム、レザ・ヘイダリ
監督・脚本・製作:ジャファル・パナヒ
撮影:アミン・ジャファリ
編集:アミル・エトミナーン
2022年/イラン/ペルシア語・アゼリー語・トルコ語/107分/カラー/ビスタ/5.1ch/
英題:NO BEARS
日本語字幕:大西公子
字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:アンプラグド
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