『真夏のシンデレラ』は“令和のトレンディドラマ” 夏に月9で観たかったものがここに

 ここ最近すっかり王道ジャンル(医療、リーガル、刑事、ミステリー)に特化していた月9で、このタイプのドラマが放送されるのは何年ぶりのことだろうか。7月10日に放送がスタートした『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)は、江ノ島を臨む海辺の町を舞台にして、地元で働く女子たちと幼なじみ、東京からやってきた高学歴(1人はそうではないようだが)の男子たちの“夏”にかまけた青春恋愛群像。時代遅れでベタな描写も堂々とやってのける、安心感にあふれた“令和のトレンディドラマ”ではないか。

 休みを利用してバカンスにやってきた、健人(間宮祥太朗)と修(萩原利久)と守(白濱亜嵐)は高校時代からの友人同士。SNSに載っていた女性の写真につられてサップ体験を申し込んだ3人の前に現れたインストラクターは、写真とは別人の夏海(森七菜)だった。翌日、夏海は友人の愛梨(吉川愛)に誘われ、理沙(仁村紗和)と一緒に愛梨がマッチングアプリで知り合った男性とのパーティへ出向く。そこにいたのは健人たち3人だった。

 青春群像の第1話となれば、いくつもの“出会い”が待ち受けているのが必然だ。夏海と健人たち3人の、ある意味で偶然の(SNSに写真を載せていたインストラクターが風邪で来られなかったという)出会いに始まり、マッチングアプリによって引き合わせられる夏海たち3人と健人たち3人。このドラマにおけるメインカップルとなるであろう、夏海と健人はこの時点で2度の偶発的なボーイミーツガール(あるいはガールミーツボーイか。感情のベクトル的にはボーイミーツガールでもいいかもしれない)を果たしており、さらにその後に江ノ島水族館という格好のロケーションで3度目の偶然が訪れることで、より2人の運命的な邂逅が決定づけられていく。

 さらに、パーティに夏海が持っていったタッパーを返却するために夏海の家(兼仕事場)にやってくる健人は、そこで夏海の幼なじみである匠(神尾楓珠)とばったり。もうこの時点で三角関係が構築されるフラグが十分すぎるぐらい立つわけだが、その匠には佳奈(桜井ユキ)という既婚者の想い人がいて、よりにもよって夏海が匠に想いを告げようと馴染みの店で待っているタイミングで佳奈が匠を呼び止めてしまう。そんな定型通りの流れに駄目押しするように、理沙が海辺で元夫と電話で話しているシーンでは、花火の音に驚いて海に落下。それを助けるライフセーバーの宗佑(水上恒司)と劇的な出会いを果たすのである。

 海辺の町と東京との格差(もっとも、江ノ島でそこまでそれがあるとは思えないが)に、貧富や学歴という、わかりやすい境遇の違い。そんな要素を絡めつつも、終盤で海に出た夏海と健人のボードが波で接近したりといった「そんなわけあるかよ」と言いたくなるような展開がこれでもかと収められている上に、まだ夏が始まったばかりだといわんばかりに断固として導入より先へ進まないストーリー、そして打ち上がる花火。タイトルの“シンデレラ”をあらわすかのようにヒロインのサンダルをキーアイテムとしたこの第1話は、夏に月9で観たかったものが全部詰め込まれている。

■放送情報
『真夏のシンデレラ』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:森七菜、間宮祥太朗、神尾楓珠、吉川愛、萩原利久、白濱亜嵐、仁村紗和、水上恒司、大西利空、森崎ウィン、桜井ユキ(友情出演)、山口智充ほか
脚本:市東さやか
演出・監督:田中亮
プロデュース:中野利幸
制作・著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
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