松井恵理子は徳川家光をいかに“演じ分けた”? Netflix『大奥』に詰まった制作陣の情熱

家光の心を知ることで変わった表現

ーー松井さんは「家光」となる前の少女・千恵の頃から、すべてを受け入れた「将軍」となる晩年の家光まで、別人のように演じ分けています。この演じ分けはどんな点を意識されたのでしょうか?

松井:女性でありながらも男性の格好をせざるをえなかった千恵/家光ですが、「女性であること」を抑えこんではいないんです。だから、「“男”になりすぎる必要はない」というのは意識していました。とは言っても女性過ぎてもやはり変になってしまうので、そのバランスは難しかったですね。最初のテストでは、監督から「お腹に力をもっと込めて」と言葉をいただきました。時代劇なので、キャラっぽい声の作り方だとどうしても浮いてしまうと。監督とも相談して、声を作ろうと意識するのではなく、「家光の気持ちに向き合おう」と意識するようになってからは、自然と演じられるようになっていきました。なので、幼少期だから、有功と出会ったからとか、意識して変化をつけようとするのではなく、自然と家光の気持ちに各シーンでなることができたような感覚です。

ーー家光は笑いながら心は泣いていたり、表面上は怒りながらも心は喜んでいたり、相反する感情が多い人物で。その表現は非常に難しかったのでは?

松井:そうですね。やはり声だけで感情を複数見せないといけないので、本当に難しかったです。第5話は、家光の感情のすべてが詰まったような回になっています。この回では、家光が笑っているけど心は泣いているシーンがあって、悩みながらも収録に臨んでOKはいただけたんです。でも、その後に家光の過去を回想するシーンを収録する中で、やっぱり彼女の苦悩を表現できていないんじゃないかと思い、もう一度お願いして収録させていただきました。家光が子供を亡くして、「乳を吸え」と叫ぶシーンがあったのですが、台本上では絶叫ではなく、もう少し淡々としている感じで、無音になっていく形だったんです。でも、現場でスタッフの方から「もしかしたら絶叫するバージョンを使うかもしれない」と意見があって、「乳を吸えええ!」と絶叫のバージョンも録ったんです。その感情を表現したら、どうしてもその前に録っていた泣き笑いの表現も、もっと違うものができたんじゃないかと思い、もう一度お願いする形になりました。実際に使用していただいたのは、再収録した方になっていたと思います。キャラクターへの思いによって、表現できるものも変わってくる、演技の面白いところだなと改めて感じました。

ーー家光としての感情を作っていくにあたっては、有功を演じた宮野真守さんの存在は大きかったですか?

松井:すごく大きかったです。先程も話題に出た有功が家光を叱責するシーンも、宮野さんが情熱をもって、有功の思いをぶつけてくださって。収録後は、宮野さんがすごいお茶目な笑顔で、「ちょっと怒りすぎちゃったかな?(笑)」みたいな感じで言ってくださったんですけど(笑)。普段はまったく怒らない、仏のような有功が、こうやって感情をむき出しにして家光には今までの「黒いもの」をぶつけてきてくれるところに「キュンとすると思います」という話をさせていただきました。宮野さんだからこその有功になっているので、楽しみにしていただきたいです。

ーー今回のアニメ版は原作の面白さをさらに増幅させるものになっていると感じています。

松井:原作漫画を読んでいるような世界観にできたらと思っていたので、うれしい限りです。その中でもアニメならではの演出をしてくださった箇所がいくつかありまして。有功の叱責シーンも、原作だと泣きそうな顔の家光のセリフが一コマにすべて詰まっていたんですが、実際の演技でここで泣きそうな感じを出してしまうと次の言葉が言えなくなるのではないかと感じたんです。音響監督からは、絵に寄せる形の芝居を頑張ってみてほしいとお話いただいて、一度はそれで進めることになったんです。でも、宮野さんのお芝居を受けて、やっぱり今のままでは少し違うのではないかとスタッフさんからも提案があって。絵を後から直すのは本当に大変なことなので、スタッフの皆さんの本作をいいものにしたいという情熱を感じました。私自身、原作がとても好きなのですが、原作ファンの皆さんにも楽しんでいただける作品になったのではないかと思います。

■配信情報
Netflixシリーズ『大奥』
Netflixにて、世界独占配信中
原作:よしながふみ『大奥』(白泉社・MELODY)
監督:阿部記之
声の出演:宮野真守、松井恵理子、梶裕貴、井上喜久子、福山潤、関智一、佐藤みゆ希、小林沙苗、窪田等
シリーズ構成・脚本:たかすぎ梨香
キャラクターデザイン:佐藤陽子
音楽:川井憲次
アニメーション制作:スタジオディーン
企画・製作:Netflix

▼松井恵理子 チェキプレゼント▼

松井恵理子さんのサイン入りチェキを1名様にプレゼント。応募要項は以下のとおり。

【応募方法】
リアルサウンド映画部の公式Twitterをフォロー&該当ツイートをRTしていただいた方の中からプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンド映画部の公式TwitterアカウントよりDMをお送りさせていただきます。

※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※複数のお申し込みが発覚した場合、ご応募は無効とさせていただく場合がございます。

<リアルサウンド映画部 公式Twitter>
https://twitter.com/realsound_m

<応募締切>
7月22日(土)

関連記事