松井恵理子は徳川家光をいかに“演じ分けた”? Netflix『大奥』に詰まった制作陣の情熱
「学生時代に読んでおけばよかった……」。そう思わずにいられなかったのが、よしながふみ著『大奥』だ。男女逆転の時代劇。そのセンセーショナルな設定にどうしても注目が集まってしまうが、本作で描かれているのは、人間の生き様であり、現在につながるまでのひとりひとりの歴史だ。『大奥』に触れれば、教科書の中にいた歴史上の人物、歴史の出来事が、急に身近に感じられるようになる。
2023年はNHKドラマ10で再び実写化され、秋からはSeason2の放送も控えている『大奥』。そんな実写版『大奥』を秋まで待ちきれないというファンの心の穴を埋めるように、6月29日より配信が開始されたのが、作品初のアニメ化となるNetflixシリーズ『大奥』だ。原作のビジュアルをそのままに、鮮やかな色彩と、声優陣の熱演が合わさり、また新たな『大奥』ワールドへの扉が開かれた一作となっている。
Netflixシリーズ『大奥』で“主役”とも言えるのが、徳川幕府3代将軍・徳川家光/千恵。『大奥』という物語全体の中でも、最も理不尽な運命に囚われたと言っても過言ではない“最初”の女性将軍だ。そんな家光を松井恵理子はどう演じたのか。【インタビューの最後にはチェキプレゼントあり】
松井恵理子が惹かれた徳川家光の強さ
ーー『大奥』は男女逆転というファンタジー要素がある作品ですが、日本史が身近に感じられるようになる作品だと感じています。松井さんはもともと日本史への興味は?
松井恵理子(以下、松井):興味自体はあったのですが、勉学がそんなに得意な方ではなくて……(笑)。ただ、愛知県三河の出身なので、徳川家康公は勝手に身近な存在に感じていたんです。だから、こうして徳川家光を演じさせていただけたのは、本当に光栄なことだなと思っています。
ーー遠縁で本当に徳川家に縁があるかもしれませんね。
松井:もしかしたら(笑)。
ーー徳川家光役のオファーが最初に届いたときは?
松井:『大奥』は原作漫画も大好きだったんです。江戸時代のお話ですが、現代と変わらない生きることの難しさだったり、愛の形が描かれていて、よしながふみ先生は本当にすごいなと。なので、家光役に選んでいただいたときは本当にびっくりでした。家光は、苛烈さと繊細さ、そして将軍としての大胆さなど、さまざまな要素を持った人物です。どう演じることができるのか、とても楽しみにしておりました。
ーー家光は最初の女将軍ということで、さまざまな困難に見舞われる『大奥』の女性たちの中でもとりわけ熾烈な運命をたどった人物です。
松井:原作を読んだときも感じていましたが、実際に演じさせていただくと、改めて家光の人生はなんて残酷なんだと感じました。私だったら絶対に心が折れてしまうような状況でも、彼女はそれに立ち向かい反抗していく。その強さには惹かれましたし、とても魅力的な女性だなと思います。
ーー「あなただけがつらい思いをしているわけではない」と、家光にとってかけがえのない存在となる万里小路有功(お万の方)が怒るシーンがあります。家光の背景を知っている立場としては、「いやいや、家光が最も理不尽な目に遭っているのに……」と思ってしまいました。
松井:そうなんですよね。後に有功も謝罪しますが、そこは「わかってあげて!」と思わず思ってしまいました(笑)。
ーー第1話で描かれる8代将軍・吉宗の物語に出てくる「ご内証の方」(将軍と最初の一夜を共にした男性は死罪を命じられる)も、家光のあまりにもつらい体験が由来になっていて……。
松井:吉宗の時代に行き着くまでに色々な歪みがあって……。成り立ちがこんなに切ないものだったのかと家光の物語を通して納得していただけると思います。たくさんの感情を皆さんに持っていただける始まりの物語になっているのではないかと。