『らんまん』中村蒼が思い出させる学問の“初心” 佑一郎との再会が万太郎を鼓舞する

 田邊教授(要潤)専属のプラントハンターになることを断り、岩に穴を開けながら進む覚悟を決めた万太郎(神木隆之介)。学歴がものを言う社会の厳しさを突きつけられても万太郎の信念は揺るがなかったものの、さすがに心中穏やかではないだろう。そんな彼を励ますかのように、万太郎の元学友・広瀬佑一郎(中村蒼)が十徳長屋を訪ねてくる。

 『らんまん』(NHK総合)第69話で、およそ2カ月ぶりに登場となる佑一郎。万太郎が上京してすぐに再会を果たして以来、久しく顔を見せていなかった彼だが、今回はあるビックニュースを持ってくるようだ。

 地元、佐川の領主である深尾氏が家臣の子たちを教育するために設立した名教館で出会った2人。当時はまだ江戸時代に確立された封建的身分制度の風習が残っており、町人でありながら名教館に通うことを許された万太郎(小林優仁)への風当たりは強かった。万太郎を好ましく思っていなかったのは佑一郎(岩田琉生)も。身分制度が廃止になったとはいえ自分は武士の子供だというプライドはもちろん、それ以上に裕福そうな万太郎を羨む気持ちもあったのではないだろうか。

 幼い頃に父を亡くし、わずか10歳で家督を継いだ佑一郎。しかしながらそれまでの主従関係が絶たれ、俸禄をもらえなくなったことで家臣も家財も手放すほかなかった。そこにきての万太郎である。塩むすびを食べる自分たちの前で、豪勢なお弁当を広げる万太郎が鼻につくのはある意味仕方がない。だけど佑一郎の置かれた状況が万太郎のせいでないことは言うまでもなく、佑一郎はただ持って行き場のない怒りを万太郎にぶつけていただけなのだ。その有り余ったエネルギーを現状への怒りではなく、未来への情熱に変えてくれたのが名教館の学頭である池田蘭光(寺脇康文) だった。

 万太郎も佑一郎も彼に学びの楽しさを教えてもらい、2人の間にある溝が少しずつ狭まったように思う。そして、名教館の廃校直前に蘭光と3人で出かけた仁淀川でその溝は完全に埋まった。

関連記事