『らんまん』「虫けらが何を言っても無駄だ!」 田邊の“悪態”を生み出している“事情”

 『らんまん』(NHK総合)第68話で、田邊(要潤)は万太郎(神木隆之介)に田邊専属のプラントハンターになることを提案する。

 田邊の台詞は強烈な印象を残す。田邊が万太郎に言い放った「私のものになりなさい」には驚かされた。台詞の言い回しからは、万太郎の才能を認めながらも決して対等な関係を築こうとしない田邊の姿勢がうかがえる。「君を認めているからこそ提案しているんだ」と話す田邊は、万太郎が断ることを想定していないらしく、余裕ある表情を浮かべていた。田邊は「私は、君が徳永くんや大窪くんよりも有用な人材だと思っている」と万太郎への評価を伝えるが、徳永(田中哲司)や大窪(今野浩喜)を下に見ているように感じられ、印象はよろしくない。

 植物学者のマキシモヴィッチが自身に代わって植物採集を務めた長之助という百姓に敬意を表して学名に「チョウノスキー」と名を入れていたように、田邊は「私が発表する時も『マキノイ』と入れてあげよう」とも提案する。田邊なりに万太郎に譲歩したつもりなのかもしれないが、やはり言葉尻に高圧的な態度が感じられる。あげく、万太郎に提案を拒まれると、田邊は強い言葉で万太郎を非難した。

「後悔するぞ」
「何の身分もない、何の保証もない、小学校も出とらん虫けらが何を言っても無駄だ! お前は私にすがるしかない!」

 感情をたかぶらせ、万太郎を“虫けら”呼ばわりする田邊。しかし寿恵子(浜辺美波)と田邊の妻・聡子(中田青渚)のやりとりの中で、万太郎の知らない田邊の一面が語られた。明るく朗らかな寿恵子に心を開いた聡子はこんなことを話していた。

「先生は、政府の森有礼様と留学の時から懇意になさってますから、政府のお仕事はお断りできないんです。そのせいで大学の総長や教授の方々からいろいろ妬まれて……。いつも気が休まらないようで……」

 聡子は寿恵子の手を取り、「槙野さんのようなお方が先生のそばにいてくださったら心強いです」と笑顔を向けた。

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