森田剛が放つ“光”と“影”に圧倒される 『DEATH DAYS』はオーディオコメンタリーも必聴

『DEATH DAYS』森田剛が放つ光と影

 森田剛主演の映画『DEATH DAYS/生まれゆく日々』のBlu-ray&DVDが、7月5日に発売される。この作品は、2021年11月に森田が立ち上げた新事務所「MOSS」によるコンテンツ制作第1弾として発表されたもの。それだけでも森田の俳優人生にとって、どれだけ重要な作品かが伝わってくる。

 そんな本作の魅力は、相反するものが表裏一体になる面白さだ。『DEATH DAYS』で取り扱うテーマは「生と死」。また同時上映されたドキュメンタリー『生まれゆく日々』では、本編が生まれる裏側を追い「虚と実」の境界線を行き来する。そして、何よりも俳優・森田剛が放つ「光(オーラ)と影(人間臭さ)」に圧倒されるのだ。

 『DEATH DAYS』で描かれるのは「生まれたときから自分が死ぬ日(DEATH DAY)が決まっている」世界の話。そのDEATH DAYは、何年のその日なのかはわからない。だからこそ、この世界では人々が「今日死ぬかもしれない」日を毎年戦々恐々としながら過ごす。森田が演じるのは、そんな世界で暮らす、ごく普通の男だ。

 友だちと集まってダラダラと過ごす20歳のDEATH DAYもあれば、恋人とたわいもない話をしてやり過ごす30歳のDEATH DAY……。死ななかったら「バンドを組もう」と夢を見たり、「永久歯になろう」とプロポーズをしてみたり。死が近いぶん生きていることにずっと重みを感じる。実際にやるかどうかは別としても、生きているうちにやっておきたいことがより明確になる。それが『DEATH DAYS』の世界だ。

 一方で、「これは完全なるフィクションと言えるのだろうか?」と思わせてくれる瞬間も。明確なDEATH DAYが存在しないとはいえ、私たちの世界もいつかは死を迎えるということは決まっている。それがいつなのかわからないだけで、実は今日がDEATH DAYかもしれない。ならば、いつだって日をまたぐ瞬間「今日も死んでなくて、おめでとう」と誰もが祝えるはずだ。

 生きていれば、死にたくなる日もある。ケーキの上に刺さったローソクの火が吹き消されるように、フッと消えてしまいたくなるような。そんな日を経験したことがある人には、ぜひ本作を観てほしい。そんな鬱々とした日に、きっと作中で流れる<死んでない 死んでない 死んでない やったね>と森田の歌声が聴こえてくる気がするからだ。

 生きていれば必ず死ぬ日がやって来る。ということは視点を変えれば、その日まで私たちは死ねないということでもある。ならば一緒に歌って、街を闊歩してみようじゃないか。いつか死ぬまで、ただ生きろ。そんな清々しいほどまっすぐなメッセージが、心にスッと染み込んでくる映画だ。

 『DEATH DAYS』は森田から長久允監督へかけた1本の電話から生まれた物語だという。森田が「何か一緒にできないか」と連絡を入れたのが始まりだったと、本作の映像特典にも収められている公開初日舞台挨拶で明かされている。それまで面識のなかった長久監督からすれば、知らない電話番号からいきなりかかってきた「森田剛です。会いませんか?」という内容に「詐欺かと思った」と言うのも当然だ。なんだか、そのエピソードだけ聞いても1本の物語が生まれるような予感がするシチュエーションだ。

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