『らんまん』要潤演じる田邊が怖すぎる 「私のものになりなさい」に万太郎はどう返すか

 不穏な空気が流れる、田邊教授(要潤)宅への訪問。『らんまん』(NHK総合)第67話は、万太郎(神木隆之介)にとって恐怖の晩餐会となった。

 「結婚祝い」の名目で招かれた万太郎と寿恵子(浜辺美波)だが、それを素直に喜ぶ彼女に対して、万太郎は最初から警戒している。我々視聴者の目線では、田邊がすでに植物学雑誌の件でダメだった時に万太郎たちの作り上げてきたものを“燃やす”とまで言っていた男であることを知っているが、万太郎も人に対する勘が結構いい。前回、新種と思わしき植物の標本を教室で開こうとした時に制された雰囲気から、すでに何かを感じ取っていたのかもしれない。

 万太郎が佐川に行っている間、田邊は自分よりもマキシモヴィッチに評価されたことが悔しくて気に入らなくて仕方なかったのだろう。自分の招いた客人である万太郎や寿恵子への嫌味が止まらない。寿恵子が高藤(伊礼彼方)を振っている現場を大笑いしていた彼だったが、やたら恩着せがましく菓子を周りに勧めたのは自分だとか、「武家の出とはいえ」と寿恵子の家柄を下げる発言をする。これには流石に戸惑う寿恵子だったが、それ以上に「つまり君は、相手がどれだけの地位にいようとも奪うものは奪う、そういうことだな?」と急に万太郎に矛先を向けるのも怖い。ぬるっとした、陰湿な悪役を演じることが本当にうまい要潤。これまでの学識の高い、しかし高圧的で自己中的だった田邊というキャラクターに、万太郎への嫉妬で少しおかしくなってしまったのか、“話の通じなさそうな人の怖さ”を新たに付与していて、悪役にさらなる奥行きをもたせている。

 実際、標本を見せた時も万太郎を「君は本物だ」と上げた瞬間、「だが、君が不憫だ」と下げる。純粋な評価と、だからこその気に食わなさが相まって情緒が不安定なのも怖い。そして植物学雑誌は“自分が許したから自分のもの”的な発言をし、恐れていた「手柄横取り」の展開が待ち受けていそうな雰囲気に。加えて、学歴のない万太郎をこれでもかと言うくらいに卑下する。それでもどうするればいいのか、田邊に助言を求めた万太郎に、大学を卒業するか留学に行くことを勧めた。

「学歴で何を図るがですか?」

 そう反論する万太郎だったが、正直、田邊の主張にも一理あるのが歯がゆい。小学校中退の身と、東京大学卒業生の発言や発表、どちらが学会や世間にとって信用できるものだろう。確かに、立派な実家の「峰屋」を捨てて好きなことだけやって生きていきたいと、いろいろ甘さもある万太郎だから、田邊が「若い」というのも少しわかってしまう。しかし、だからこそ田邊のような人間から見た“アウトロー”の万太郎が、痛快に日本の植物学会を揺るがし、新しい道を築いていく姿を見てみたい。

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