『あなたがしてくれなくても』みちと陽一の結婚は“無駄”だったのか? 特別編で見えたもの

 “最終話で描かれなかった空白の数カ月”と題して『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)特別編が6月29日に放送された。それは、みち(奈緒)と共に、この2カ月間を振り返り、終わってしまった恋や離婚してしまった結婚は、人生において無駄なことだったのかと考える時間となった。

 最終話では、みちと陽一(永山瑛太)の吉野夫妻、誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)の新名夫妻がそれぞれ離婚を決断。みちは自立を目指して営業に転身、陽一は独立に向けて動き出し、誠は転職先の会社で、楓は異動先の編集部で、と、それぞれの道を歩くことに。一見すると、離婚をしたことで自分が本当に歩きたかった道を邁進できるようになったように感じる。

 2カ月前の彼らは、パートナーとのセックスレス問題が常にストレスとして頭を悩ませていた。夜が来るたびに、レスられ側は「今日も断られるのか」と気落ちし、レスる側も「今日も誘われるのか」と重い心を抱えていた。最も安らげるはずの我が家に帰るのがお互いにちょっと億劫になるほどだった。

 決して傷つけたいわけではないけれど、「どうしてわかってくれないんだ」という気持ちが先行して傷つけ合ったりもした。断られる度に消えたくなって、断るたびに居心地の悪さを感じて。結婚していないころのほうが幸せだった、そんなふうに考えたこともあったはず。

 では、彼らの結婚は「無駄」だったのだろうか。そんな問いかけに「結婚しなきゃわからないことってありませんか?」と答えてくれたのが、いつも達観した視線でみちの相談に乗ってくれた後輩の華(武田玲奈)だった。

 「一緒に過ごした日が何だったのかなんて、そんなこと考えだしたら誰とも会わず孤独に生きるしかないです。だから、そんな悲しいこと考えちゃダメですよ」と続けた華。彼女の言う通り、「無駄」かどうかなんて考え始めたら、人生の大半が無駄に分類されてしまいそうになる。

 陽一が淹れるコーヒーも、誠がくれた砂時計も、楓が作る雑誌も、みちが書いた柿の種の底のメッセージも……もしかしたら誰かからの目で見れば「無駄」になってしまうかもしれない。

 でも陽一のコーヒーを飲んで「美味しい」と結衣花(さとうほなみ)はホッとすることができたし、誠の砂時計をもらったみちは心がときめいた。楓の手掛けた雑誌を誠の母・幸恵(大塚寧々)はいつも誇らしく抱えていたし、みちのメッセージが書かれた容器を陽一は姉に捨てられないようにそっと取っておいた。

 ある人にとっては「必要?」と思われてしまうものでも、ある人にとってはすごく大事なものだったりする。誰かに恋をしていた時間や、結婚をするということも、きっとそういうものと同じなのではないだろうか。そして、セックスというコミュニケーションも。

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