『風間公親-教場0-』堀田真由が作り上げたブロックの正体 “不在の友を思う”木村拓哉

 先週放送されたエピソードで最終話を迎えた『風間公親-教場0-』(フジテレビ系)。6月26日に放送された特別編は、取り立ててなにか新しいストーリーが描かれることはなく、毅然とした総集編としてまとめられていた。“風間道場”で教えを受けた5人の刑事たちが対峙した事件と、彼らそれぞれが抱えている物語。最終話のラストで風間(木村拓哉)が見た十崎(森山未來)の口から発せられた「妹はどこだ」についての言及を含め、“今後”につながりそうな明確な描写はなかったといっても差し支えないだろう。

 この「月9」枠で「特別編」と銘打ったエピソードが放送されるのは2021年10月期の『ラジエーションハウスII〜放射線科の診断レポート〜』(フジテレビ系)以来となる。その後も昨年4月期の『元彼の遺言状』(フジテレビ系)や7月期の『競争の番人』(フジテレビ系)、前クールの『女神の教室』(フジテレビ系)と、最終話のひとつ手前でひとしきり物語が完結を迎え、事実上のエピローグとして最終話が展開する流れはあったが、2時間枠での「特別編」ともなれば、なにか“特別”なものを期待してしまうのは致し方あるまい。そういった意味では、たとえ総集編であっても映画化なり続編の報せが欲しかったところだが、それはまだお預けというわけだ。

 さて、この『風間公親-教場0-』をざっと振り返ってみると、長岡弘樹による原作小説『教場0  刑事指導官・風間公親』と『教場X 刑事指導官・風間公親』(こちらはSP版ドラマが放送された以後に発表されたものだ)の2作に含まれた12の短編エピソードの事件を、原作が持ちうる倒叙ミステリーとしての側面を活かし、各々に登場する新人刑事を整理したうえで余すところなく映像化した印象を受ける。そしてSP版で深掘りされなかった風間の義眼の真相について、遠野(北村匠海)というキーパーソンを据えて描く。それがこのドラマの本質的な部分といえよう。

 今回の特別編で新たに描かれた部分は、2時間ほどの放送枠のなかで10分にも満たない。風間が去った後に片付けをしていた幸葉(堀田真由)がブロック玩具を整理し、覚えのない長方形のブロックを見つける。そこへやってきたのは捜査一課の刑事コンビ、谷本(濱田崇裕)と尾山(結木滉星)。彼らと会話を重ねたのち、幸葉は何かに気が付き長方形のブロックに細かいパーツをはめていく。そこで出来上がるのは警察学校の花壇、すなわち亡くなった遠野が世話をしていた、彼の形見の分身を作りあげるのだ。

 一方で、警察学校の教官に転属した風間は、まさしく遠野が世話をしていた美しい花壇に向き合う。ラストで画面に映る花壇の花はジニア(百日草)であり、その花言葉は「不在の友を思う」だそうだ。思い返してみれば、5人の新人刑事のなかで唯一車の運転を任されたのは遠野であり、風間は遠野を刑事として認めていたことがわかる。刑事として、師として、そして友として、彼の死を悼んでいるのだろう。ただそれだけで、SP版と変わらず冷徹な人物として描かれていた風間の人間らしい一面が垣間見える。この花にはもうひとつ花言葉がある。「注意を怠るな」。それはこの先、風間が“教場”で教えようとしていることと合致しているではないか。

■配信情報
フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親-教場0-特別編』
TVer、FODにて配信中
出演:木村拓哉、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太ほか
原作:長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』『教場X 刑事指導官・風間公親』(小学館)
脚本:君塚良一
演出・プロデュース:中江功
プロデュース:渡辺恒也、宋ハナ
音楽:佐藤直紀
主題歌:Uru「心得」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyojo0/
公式Twitter:@kazamakyojo
公式Instagram:@kazamakyojo

関連記事