『スパイダーバース』続編、まさかの北米No.1返り咲き 『ザ・フラッシュ』と明暗分かれる

 北米映画興行で稀に見る快挙だ。6月23日~25日の週末興行収入ランキングは、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が再びNo.1を獲得。サマーシーズンの真っ只中でありながら、公開4週目にして初週以来の首位に返り咲いた。

 本作は3日間で1930万ドル(前週比-28.5%)という堅実な成績をキープし、北米累計興収は3億1705万ドルを達成。海外興収は2億4320万ドルで、世界累計興収は5億6025万ドルとなっている。

 そもそも1億2066万ドルという初動成績から今夏No.1(※現時点)の記録を打ち立てていた本作は、すべては作品のクオリティゆえだろう、その勢いをほとんど落とすことなく走り続けている。製作費は1億ドルとあって、広報・宣伝費を鑑みてもコストは回収済みだろう。2024年公開の次回作『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』にさらなる期待がかかる。

『マイ・エレメント』©2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 今週は、作品への評価が興行面に表れた映画がもう一本ある。ディズニー&ピクサーによる最新作『マイ・エレメント』だ。公開初週は3日間で2960万ドルと、『トイ・ストーリー』(1995年)を除きピクサー史上最低の滑り出しとなったものの、今週は3日間で1846万ドル、下落率を前週比-37.6%にとどめて第2位の座を守り抜いた。

 背景にあるのは、Rotten Tomatoesで批評家75%・観客92%、劇場の出口調査に基づくCinemaScoreで「A」評価を得ているほどの観客支持の高さ。初動の鈍かった作品が、本当に口コミ効果で粘りを見せるのも、これまた稀なケースだ。10日間の北米興収は6551万ドル、海外40市場での興収は5560万ドルで、世界累計興収は1億2111万ドル。黒字化はまだ遠いが、ひとまずポジティブな話題であることは間違いない。日本では8月4日公開だ。

『ザ・フラッシュ』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved © & TM DC

 『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』と『マイ・エレメント』がそれぞれの道筋で健闘する今週、思わぬ苦境に立たされているのが、第3位『ザ・フラッシュ』だ。前週の1位から2ランクダウンで、3日間の興行成績は1526万ドル。前週比-72.3%という大幅下落となった。

 地上最速のヒーロー、フラッシュの初めての単独映画であり、DCユニバースの最重要作といわれてきた本作は、「スーパーヒーロー映画史上最高傑作」との前評判にもかかわらず、公開初週から事前の期待を大きく下回った。その前評判こそが足を引っ張った可能性を含め、考えられる失敗の要因は前回のコラムでも指摘したものの、2週目もその影響は続いている。

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 本来、スーパーヒーロー映画はファンを中心とした興行になりやすいため、2週目にはガクンと数字が落ち込む傾向にある。それにしても-72%もの暴落は珍しく、同じく大幅下落となった『シャザム!~神々の怒り~』(2023年)でさえ-69%だったのである。

 歴代のスーパーヒーロー映画で、2週目の下落率が最も大きかったのは『モービウス』(2022年)の-73.8%。これに『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)と『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年)の-71.5%、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)の-69.1%が続くため、『ザ・フラッシュ』は歴代ワースト2位となる可能性が高い。ただし、『モービウス』と『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』はコロナ禍の影響がいまだ大きい時期の公開だったことを忘れてはならないだろう。

 『ザ・フラッシュ』は北米興収8764万ドル、海外興収1億2330万ドルで、世界累計興収は2億1094万ドル。現行のDCユニバースは、まだ『Blue Beetle(原題)』と『Aquaman and the Lost Kingdom(原題)』の2作が2023年内に北米公開予定だが、この流れだと両作の興行にも不安が残る。その後は新構想がスタートするものの、DC映画が興行的に持ち直すのはどのタイミングとなるか。

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