森七菜×奥平大兼、10代での劣等感や孤独を語る “誰にも言えない”悩みと向き合うには

森七菜「人に言えない悩みを抱えているのは同じ」

ーー原作を読んだ上で映画を観て強く感じたのが、「自分だけが違うのではないか」という高校生くらいの年代で悩むことの多いテーマが丁寧に描かれていることでした。演じられているキャラクターたちが悩んでいることと同じような葛藤は、それぞれご自身にもありましたか?

奥平:それで言うと、学校にあまり行けてなかったというか、周りの子がしていたようないわゆる“青春ぽい”経験を自分はできなかったところがあって。そこに関しては、たまに心の中で引っかかりを抱くことは、ちょっとだけあります。例えば、LINEのグループで仲いい友達だけのグループがあったのですが、僕は仕事の都合で休みの日に別になってしまうことが多かったんです。僕以外のみんなは一緒に遊んだり、どこかに行ったりしていて、そこで撮った写真をみんなに共有するためにグループに送っているんです。一方で、僕としては仕事の写真なんて友達に送ることはもちろんなくて。その子たちも僕をはぶいているとか、嫌いとかそういうのじゃないんですけど、でもその写真の中に、今までは僕がいたのにいないっていうのが、最初はすごく悲しくて。

奥平大兼

ーーそういう感情は、今は自分の中でうまく扱えるようになってきたのですか?

奥平:でも撮影で“それ”が体験できるっていうのがわかってきました。今回の撮影もめっちゃ楽しかったんです。もちろんお仕事ではあるのですが、お芝居も楽しめたし、みんなといる時間も楽しめました。たぶん高校生の子たちもこういう感じで、何気ないことが今考えたら楽しかったんだな、というのが“楽しい”ことなのだと思えて。これって別に高校生じゃなくてもできることなんだなと思えてからは、そんなに悲しくなる必要もないな、と思えています。

ーー大きい意味においては、丸太がカメラや伊咲と出会ったことで変わっていく描写と共通する部分があるなと感じました。

奥平:もちろん彼らと悩みの質とかは違うかもしれないですけど、でもそれを誰かに言う、言わないとかっていうことについては同じことだと思います。そういうことの恥ずかしさや言いづらさは自分ごととして理解して演じていました。

ーーありがとうございます。森さんはそういった感覚はありましたか?

森:なんていえばいいのか……私にとって、若者みんなが悩むようなことを悩めるほどの人生経験ができてなさすぎて、それが悩みかもしれないです(笑)。たとえば高校受験も、芸能活動しながら受験できる大分の高校もあまり候補がなく、受験に悩んだり高い目標を掲げたりもしたことがなくて。バイトもしたことないですし。

奥平:バイトね。めっちゃわかる。

森七菜

森:シフトがどうとか、みんなが話しているのを聞いていると「バイトしてみたかったな」と思います。たぶん、お芝居をする私たちが厳密には“一番生活をする人”じゃないといけない。お芝居をするから。なのに、何もできていないっていうコンプレックスがずっとあって。でも、そんなことをみんなに対して自分から言う話でもないので、そのことで自分だけが感じる溝があるんです。地元でお仕事をしている友達との、そういうちょっとした溝に寂しさを感じることがあります。そうした劣等感とも言えるようなものがあるのは伊咲にも共通していると思っていて、人には言えない悩みというか、“言うつもりもない”悩みを持っている。他人には自分が強い人だと思われているのに、人に言えない悩みを抱えているのは同じだと思っていました。

ーーありがとうございます。最後に改めて本作の魅力について、ご自身が率直に感じていることを教えてください。

奥平大兼、森七菜

森:魅力はたくさんあるんですよね。とにかく景色が美しくて、劇場にいるだけで美味しい空気を吸ってるような気分になれると思うんです。だから七尾の素晴らしさを体感してほしいです。それと、単純じゃない人間関係が描かれています。人間ってやっぱり複雑で、自分自身も複雑でいいんだなっていうことや、人生の全ては一般的な漫画とかのようにはいかないんだ、というのをこの漫画が教えてくれました。そうしたものを映画を通して届けられるように頑張ってきたので、観た人が自分を肯定するきっかけになってくれたら嬉しいです。

奥平:僕は、本作は生きてるリアルな高校生のお話で、映画として出来上がったものに力がこもっていると感じています。もちろん原作にパワーがあるし、演じたみんなの力もあると思うのですが、とても“感じる”作品に仕上がっていると思っています。自分とそこまでかけ離れてない子が同じように悩みを抱えていて共感できるとこもあるし、でも下手に共感ばかりするのもよくないのかな、とも思ったりすることもあります。つまり、「あなたが抱えている悩みが解決します!」というような映画ではなくて。そんな大層なことではないけれど、ちょっとでも気が楽になるというか、“1人じゃない”っていうのを感じさせてくれる作品だと僕は思います。そういう作品に出会えることって、とても素敵なことだと思います。もちろん観る人によって捉え方は変わるのかもしれませんが、いろんな人に観ていただきたいです。

■公開情報
『君は放課後インソムニア』
全国公開中
出演:森七菜、奥平大兼、桜井ユキ、萩原みのり、上村海成、安斉星来、永瀬莉子、川﨑帆々花、工藤遥、斉藤陽一郎、田畑智子、でんでん、MEGUMI、萩原聖人
原作:オジロマコト『君は放課後インソムニア』(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
監督:池田千尋
脚本:髙橋泉、池田千尋
企画・制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
配給:ポニーキャニオン
製作:映画「君ソム」製作委員会
©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会
公式サイト:kimisomu-movie.com 
公式Twitter:@kimisomu_movie
公式Instagram:@kimisomu_movie

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