波瑠×高杉真宙『わたしのお嫁くん』が気付かせてくれた、日々の生活と重なる多くの問題

 「物に定位置を決める」「床の上にものを置かない」「ちょっとの掃除を習慣にする」などなど、部屋をきれいに片付けるコツはたくさんあるというのに、部屋はすぐに汚くなってしまうものだ。『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)の主人公・穂香(波瑠)も、自分のスペースをすぐに散らかしてしまうタイプ。穂香自身は「家事が苦手だから」と言っているが、実際は、自分の頭の混乱が部屋に出てきてしまっているのではないだろうか。それくらい、ひょんなことから同居を始めた穂香と知博(高杉真宙)にはいろんなことがあった。そんなふたりの物語もいよいよ最終回を迎える。

 “社会派ラブコメディ”の本作は、フェアじゃないことに納得できない性格の穂香の姿を通して、これまでうっすら意識していたが、深くは理解できていなかったさまざまな問題を取り上げてきた。たとえばそのひとつが「イメージの押し付け」。穂香は人当たりがよくて、誰にでも優しく、仕事も気遣いもできたため、周りから憧れられ、「理想のお嫁さん」とまで言われていた。そういうイメージがついていることを知っていた穂香は、強く否定はしなかったし、それどころか仕事を有利に進めようと、掃除機を売り込む際に、毎日欠かさず掃除をしている風を装ったこともある。それは実際の穂香の姿とイメージはかけ離れていたわけだが、誰も「実際は違っているんじゃ……?」とは思わなかったということである。私たちの生活を振り返ってみても、そういう場面はいくつも思い浮かんでくる。

 また、一般的には「家事は女性がやるもの」「力仕事は男性がやるもの」といった考えが広まっているが、このように社会生活において、性別によって固定的な役割を期待されることを「ジェンダーロール」と言うそうだ。穂香の“お嫁くん”となった知博は、ジェンダーロールとは別の役割を得たわけだが、「嫁であること」を意識しすぎてしまい、穂香に肩身の狭い思いをさせてしまった。こうなってしまった背景には、知博側には「男でも家事が十分にできるところを見せなければならない」という思いがあり、穂香側には「女性がやるべきことを男性にやらせているのは恥ずかしい」というような思い込みがあったのかもしれない。知博が“お嫁くん”となり、果たす役割を男女逆転させたことによって、私たちの中に、いつの間にか固定されたジェンダーロール的な考え方があることを自覚させられた。

 さらに、何かと知博にちょっかいをかけてくる同期の赤嶺(仁村紗和)は知博のことが気になっているわけではなく、穂香を“推し”にしているファンであったし、穂香の彼氏のフリまでした古賀(中村蒼)は穂香よりも、彼女を通して交流が増えた知博を仕事のパートナーにしたいと考えていた。“好意的な感情”というのは全てが恋愛につながるわけではない。これもまたこのドラマによって気付かされたことだ。

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