『わたしのお嫁くん』が問い直す結婚と仕事の天秤 波瑠&高杉真宙の“一番いい形”とは

 「山本くん、俺んとこ、嫁に来ん?」速見穂香(波瑠)と山本知博(高杉真宙)の間をひたすらに引き裂こうとしていた赤嶺(仁村紗和)の推しが実は穂香だったように、意外な展開が見られた『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)第10話。調理家電の開発に特化した子会社の福岡での立ち上げメンバーに選ばれた古賀(中村蒼)が、同じくその一員として引き抜こうとしているのはどうやら山本のようだ。

 親友・君子(ヒコロヒー)が結婚を決め、穂香と山本は自分たちの交際について上司に報告する。にわかに結婚話が2人の間で持ち上がり始めた頃、穂香には上司から管理職へのキャリアアップの話が持ちかけられる。さらに、カップルや夫婦は同じ部署にいてはいけないという暗黙の社内ルールに則り、営業部エースの穂香ではなく、山本は自分が異動することを名乗り出る。

 もともと企画開発部に行きたかった山本は、これを機に社内人事制度を使って異動希望を出す。穂香と付き合えたことでチャンスをもらえたと前向きな彼は眩しい。

 「お互いちゃんとやりたい仕事をして、家に帰ったら好きな人がいて、2人とも仕事頑張った〜って日は買って来たピザとビールで乾杯してさ、それだけでも最高じゃん。結婚とか難しいこと考えなくても」とは穂香の心からの言葉だが、2人はまさにそんな理想形に向かっているかに思えた。

 山本の異動の夢が懸かった面接までは2人の同棲も一時解消し、山本は実家で集中して準備に臨むことにする。

 しかし、企画開発部への異動が叶わなかったとわかるなり、山本は「諦めるんじゃなくて俺たちにとって一番いい形だと思って切り替えるだけ」と言う。古賀が穂香を福岡行きに誘っているのではないかという誤った焦りもあるだろうが、目標に届かなかった言い訳として“結婚”を使っているようにも聞こえる。自分との関係の継続や結婚、自分の身の回りのサポートを夢を諦める理由や逃げに使われてしまうのは穂香としても本望ではないだろう。山本自身も口にしていた通り、これが男女逆転ならばそう珍しいことではなく、二択を迫られてきた人も少なくないだろうが、本作では結婚によって仕事を諦めようとする展開を男性側に起こることとして描いたのが秀逸だ。

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