『ロッキー』『クリード』シリーズに貫かれるメッセージ 各作品の名台詞とともに紐解く

 マイケル・B・ジョーダンが主演と監督を務めた『クリード 過去の逆襲』が公開された。本作は、シルヴェスター・スタローン主演の伝説的作品『ロッキー』サーガを引き継いだ『クリード』シリーズの3作目にあたる。これで『ロッキー』と『クリード』は両シリーズを合計すると9本制作されたことになる(再編集版の『ロッキーVSドラゴ』を除く)。

 この9作を並べてみると、驚くほど同じパターンを繰り返しながら、同じメッセージを伝えていることがよくわかる。シリーズで初めてスタローンが出演しなかった『クリード 過去の逆襲』も例外ではない。それが一体何かを解き明かしてみたい。

 『クリード 過去の逆襲』は、世界チャンピオンになった“アポロの息子”アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)の前に、刑務所から出所したばかりの幼なじみ、デイム(ジョナサン・メジャース)が立ちはだかるという物語だ。

 ネタバレを避けるため詳述はしないが、これまで『ロッキー』シリーズを繰り返し観てきた人なら、本作にたくさんの『ロッキー』シリーズの要素が含まれていることがわかるだろう。「ハングリーな無名選手の抜擢」や「過去のライバルの協力」「敗北からの復活」などのストーリー展開もそうだが、重要なのは物語の核の部分、いわば“魂”の部分だ。

ROCKY (1976) | Official Trailer | MGM

 『ロッキー』は負け犬(アンダードッグ)の復活の物語である。しがない三流ボクサーのロッキー・バルボア(ヴェスター・シルスタローン)は、華々しい世界チャンピオンのアポロ・クリード(カール・ウェザース)に抜擢されてタイトルマッチに挑むことになる。

 ロッキーは予想に反して15ラウンドを戦い抜き、一夜にしてヒーローになった。忘れられていたアメリカンドリームの復活に、物語の中の観客と同様、映画館の観客も熱狂した。だが、ロッキーにとって大切だったのは、自分が負け犬ではないと証明することだった。決戦の前、ロッキーはエイドリアン(タリア・シャイア)の前で本音を吐露する。

「たとえ脳天を割られたって平気だ。最後まで持ちゃ、それでいい。みんな途中でノックアウトされてるんだ。15ラウンド戦って、ゴングが鳴ってもまだ立っていられたら、ただそれだけで俺は満足だ。ゴロツキじゃないってことを証明できる」

Rocky III (1982) | Official Trailer | MGM Studios

 自分のために戦うことの大事さはシリーズを通して何度も語られている。『ロッキー3』は、闘争心をどう回復するかという物語だった。世界チャンピオンとなったロッキーが我が世の春を謳歌しているところへ、ハングリーな挑戦者、クラバー・ヤング(ミスター・T)が現れる。

 クラバーに敗れ、老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)も失い、しょげかえるロッキーに喝を入れたのはエイドリアンだった。

「今こそあなたはやらなきゃいけないのよ。それはミッキーのためでもない。ファンのためでもない。タイトルやお金や私のためでもない。自分のため、自分自身のためだわ」

 『ロッキー4/炎の友情』でも描かれている。ソ連の戦闘マシーンとして生み出されたイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)。モスクワでロッキーを迎え撃った試合では、ハングリー精神を取り戻したロッキー相手に想像以上の苦戦を強いられて、試合途中にもかかわらず政府高官に非難される。そのときにドラゴはこう絶叫するのだ。「俺は勝つために戦う! 自分のためだ! 自分のために戦う!」。

 『ロッキー・ザ・ファイナル』では、50歳を過ぎて世界チャンピオンに挑もうとするロッキーが息子のロバート(マイロ・ヴィンティミリア)になじられる場面がある。ロバートは偉大なチャンピオンの息子という立場に押し潰されていたのだ。しかし、ロッキーは激しく自分の思いを息子にぶつける。

「人生はどんなパンチよりも重くお前を打ちのめす。だが、どんなにきついパンチだろうと、どれだけこっぴどくブチのめされようと、休まず前に進み続けろ!」

 そしてこう結ぶ。「自分を信じて生きろ。でなきゃ、人生じゃなくなる」。

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