『メダリスト』はアニメ化とも好相性? 応援せずにはいられない原作漫画の魅力を熱弁!

すべての挑戦者たちへの肯定

 加えて、『メダリスト』の新機軸は、アスリートとコーチのバディものであるところだ。小学生の少女よりも、彼女を支える司コーチに感情移入している層も少なくないだろう。

 いのりと司コーチVS天才少女・狼嵜光と元金メダリストの夜鷹純コーチの対決がメインストリームだが、それ以外にも大会ごとに登場するライバル選手とコーチが自分たちなりの個性や戦略を武器に夢に全力で挑む姿にも共感を覚える。

 スポーツの世界では、一人(一組)を除き、全てが敗者となる。この作品は、敗れた者の物語も愛情深く描いている。その姿はとても尊く、美しい。すべての挑戦者たちを肯定したいという、作者の強いメッセージが伝わってくる。

 『メダリスト』は第8巻が発売されたばかり。いのりや光はトップスケーターの第一関門である、全日本ノービスを戦っている。まだまだジュニア、シニアと、オリンピックメダリストになるまでの道のりは長い。壮大な物語を現在進行形で体験できる。浅田真央さんや宇野昌磨選手らが世界へ駆け上がっていった過程を追体験させてもらっているような、そんな気分になれる。全力で応援せずにはいられない。

ダイナミックかつ繊細なアニメーションを期待

 アニメ化で楽しみなのは、アニメ特有の表現である、動き、色彩、音が加わることによって、各選手のプログラムの世界観がより鮮明になることだ。

 最近のスポーツアニメにはモーションキャプチャを含めた3DCG技術が導入されるケースが増えているそうだ。映画『THE FIRST SLAM DUNK』は本物の試合を見ているような没入感があった。

 『メダリスト』の演技シーンはどれだけリアルに表現されるのだろうか。ジャンプ、スピン、ステップがどれほどの迫力で描かれるのか? 原作で断片的に描かれているプログラムはどのような振り付けになっているのか? 音楽はどんな編曲なのか? 衣装の色味は? 気になるポイントは多い。

 素晴らしい演技を観たい気持ちは、もちろんある。その出来いかんで、一気にファン層を広げることだろう。しかし『メダリスト』にとって、演技シーンは一要素にすぎない。登場人物の成長の過程が丁寧に描かれることの方が重要だと個人的には思っている。この作品が伝えようとしているテーマは、それ自体が多くの共感を得られるはずだから。

 ただし、原作では、地元愛知の名古屋スポーツセンターや、邦和スポーツランドなど実在のスケートリンクが再現性高く描かれている。それはリンク内にとどまらず、ロッカーやベンチの配置、スケート場の外観や周辺の街並みになど細部にまで至っており、緻密な取材を感じさせる。愛知生まれの筆者としては、原作の、神が細部に宿ったような隅々まで行き届いた作画を踏襲してほしいと願っている。

■作品情報
『メダリスト』
原作:つるまいかだ(講談社『アフタヌーン』)
監督:山本靖貴
シリーズ構成・脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:亀山千夏
アニメーション制作:ENGI
©︎つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会
公式サイト:https://medalist-pr.com
公式Twitter:https://twitter.com/medalist_PR

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