『良くも、悪くも、だって母親』イ・ドヒョンの真意が明らかに ミジュとの幸せを願って

 Netflixで配信中の『良くも、悪くも、だって母親』。イ・ドヒョンが記憶を失くした7歳児と、記憶を失くす前のエリート検事の“甘さとクールさ”の両方を演じ、観る者の目を惹きつけている。物語の中でこれまで謎とされていた秘密が明かされ、視聴率も初回の3.5%から、第10話は9.9%へと約3倍に上昇(ニールセンコリア調べ)。5月15日~5月21日週のNetflixグローバルTOP10(非英語シリーズ)では、前週より1ランク上がって第4位にランクインした(以下、第10話までのネタバレあり)。

 第9話、第10話は、これまで謎とされていたイ・ドヒョン演じるチェ・ガンホが記憶を失う前の姿が描かれた。ガンホは、母チン・ヨンスン(ラ・ミラン)と、自分のねじれた関係の発端となった父親の死の真相を知るために、検事となり過去を調べていく。その中で、自殺だと思われていた父の死が、実は殺人であったことを突き止める。父の死に関わっていたのが、当時の事件担当検事であり、今は国会議員のオ・テス(チョン・ウンイン)とウビョクグループ会長のソン・ウビョク(チェ・ムソン)であることを知ったガンホは、彼らに近づき復讐を企てる。しかし、ガンホは身の危険を感じ、ヨンスンに向けて事の経緯を綴った記録を残していた。

 ガンホは、表向きはヨンスンに冷たく振舞いながらも、実は母親を大切に想っており、自身に対する母の、“厳しさの陰に隠れた優しさと愛情”を、ちゃんと感じ取っていたのだった。子供の頃から優しく母親想いのガンホが、事件を調べていく中で、どれほどの恐怖と戦っていたのかということを知ったヨンスン。涙を流しながら、事件の真相に近づく中で、ガンホに起きた事故の恐ろしさを再認識する。ガンホの事故が偶然ではないことを知ったヨンスンは、今のガンホを守るために、全ての記録を燃やしてしまう。

 ガンホの過去が描かれた中で、ヨンスンが“怪物”になってしまったと思っていたのは間違いであったことがわかった。ヨンスンは慟哭し、ガンホに迫る危険に思い至る。夫の死の真相を知り、ヨンスンが選んだのは、“復讐”ではなく、全てを忘れて前に進むこと、“ガンホの幸せ”を望むことだった。

 ここから、ヨンスンなりの“ガンホの幸せ”のために、またもやヨンスンの暴走が始まるのだが、どうもヨンスンは、ガンホをコントロールしようとする癖が抜けない。これまでのヨンスンの生きざまを見る限り、親を亡くし、弟を亡くし、夫を亡くし、今自分の手元にいる大切なガンホだけは、決して亡くしたくないのは想像できる。ただ、その愛情ゆえの行動が子にはすこぶるキツイ……。さらに、「悪い母」になり続けることで、子に幸せを与えようとするのは、ヨンスンだけではなかった。

 ガンホの昔の恋人イ・ミジュ(アン・ウンジン)は、シングルマザーで双子を育てているが、双子の父親が誰かということを告白されたミジュの母は、ミジュにとっての「悪い母」となる言葉をミジュに告げる。ガンホの幼なじみで、刑務所に出入りするトラブルメーカーのパン・サムシク(ユ・インス)の母もまた「悪い母」だ。さらにミジュ自身でさえ、双子の子どもたちにとっては、“彼らのため”を想い、「悪い母」であった。子を想うあまりに、干渉し、行動を制限し、抑制し、母親が良いと思う道へ進ませようとコントロールしようとする行為。これらの、“人格を踏みにじるような行為”をされたことのない幸運な人はまれであろう。親自身が、“子を信頼する”という成長を、子育てをしながら学ばなければならないのだ。子育て=親育てで、子と親がそれぞれ成長していく中で、子離れ、親離れができてゆくのだが、これが“言うは易く行うは難し”だ。

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