『unknown』は全ての“吸血鬼”な人たちに贈る応援歌 貴島彩理プロデューサーが語る裏話

『unknown』は全ての“吸血鬼”な人たちに贈る応援歌

――視聴者からの反響について、現場でお話しするようなことはありますか?

貴島:すごく細かい部分まで観てくださっているので、みなさんの考察にドキドキしたり、合っているものにハッとしたり(笑)。全然違う考察にも「こんなストーリー展開もあったか~」と楽しみながら、現場でわいわい拝見しています。

――Twitterで開催された「犯人考察クイズ第3弾」では、町田さん演じる加賀美がダントツで怪しまれていました。

貴島:怪しいというより「血まみれでサイコパスな町田さんが見たい」みたいな声が多いみたいです(笑)。加賀美がキャラクターとして人気という象徴でもあるのかなと。現場では、町田さんが「俺そんなに怪しいのかなぁ」とちょっぴり凹んでました(笑)。

――(笑)。視聴者の感想で、とくに印象的だったものはありますか?

貴島:ドラマが始まる前は、“吸血鬼”というファンタジーな設定をSFやコメディだと捉える方が多かったのですが、血を吸うとか、日光に弱いとか、にんにくや十字架が苦手という設定は、実は好みや思考の違い、国籍や宗教の違いにも置き換えられる……つまりはメタファーだと、きちんと気づいてくださる視聴者がいたことが嬉しかったです。『unknown』は決して「見やすい」「わかりやすい」ドラマではないと思います。どちらかというと見逃してはいけない、考えなければいけないドラマで、視聴者に負担を強いるドラマに挑戦したと思っています。ゆえに、根底のメッセージに果たして気づいてもらえるのか、キャスト、スタッフ共に博打のような気持ちもありました。なので、“ちゃんと届いた”ということに関しては、他の作品の倍くらい嬉しい気持ちになりました。

――先ほどのお話にもありましたが、サスペンス、ラブ、コメディと様々な要素が一つの作品に詰まっているので、そのバランスが難しそうです。

貴島:人が死んでいく物語なのに、ラブとコメディが残る本作は、一歩間違えば不謹慎になってしまうので確かにレベリングは難しかったです。でも、脚本の徳尾さんが「人は大切な人が死んだ次の日もご飯を食べるし、笑うこともある。悲しいことがあったから、みんなが悲しい顔をしなければいけないっていうのも変な話だ」とおっしゃっていて、その通りだなと。人生は情緒不安定なもので、この作品はある意味リアル……その難しいバランスを、キャストと監督が現場でセッションしながら作り上げてくれています。

――この作品はキスシーンが多いですが、たくさんのキスを描くことにはどんな意図があるのでしょうか。

貴島:こころと虎松は夫婦なので、おのずとボーイミーツガールな距離感ではないし、スキンシップが深いというだけですね。あとは、高畑さんと田中さんだからこそ、本来セリフで言うべきものを、キスで表現することに挑戦できているシーンもあります。たとえば、第1話でこころが「私、吸血鬼なんだ。それでも愛してくれる?」と言った後に、虎松がキスで答えるシーン。普通ならばわかりやすいセリフで説明するべきものを、この2人なら芝居のみで表現できると思って、あのキスシーンを作りました。実際、現場でそのシーンを見たとき、手の位置がどうとか、胸キュンがどうとか、そういうものを凌駕する芝居がそこにはあって。「今、我々はキスシーンではなくて感情を見てるんだな」と思いました。そんなことを思ったのは初めてで、ゾッとするくらいの演技力だなと戦慄したのを覚えています。

――これまでの撮影で、とくに印象に残っている出来事はありますか?

貴島:血塗れのシーンでも爆笑しながら撮影しているチームなので、毎日面白かったことばかりなのですが……まつりの葬式シーン(第6話)の撮影時、どうしても「まつり」の名前を呼び間違えてしまうというアクシデントが発生して(笑)。当のご本人は気づかずに熱演を続けるので、現場が“絶対に笑ってはいけない葬式”みたいになってしまって。不謹慎ながら忘れられない1日でした。でも編集あがりを見たら、ちゃんとものすごく悲しいシーンになっていて、それもすごいなと思いました。

――笑ってはいけない状況だからこそ、より笑っちゃうみたいなところもありますよね。

貴島:はい(笑)。でも、現場にいると役の感情に持っていかれたりすることもあるので、どんなときでも笑いがあるのは素敵なことだなと思います。

――本作に限らず、貴島プロデューサーが作品を作る上で大事にしていることを教えてください。

貴島:視聴者、キャスト、スタッフ、みんなが幸せになれること。もちろん視聴者に楽しんでもらうために作っているけれど、そのために現場が苦しい思いをするのはなんだか違うかなと思っていて。楽しんで作らなければ、それが画面を通して視聴者にも伝わってしまうだろうなとも思うので……って、学生みたいな回答ですね(笑)。

――いえいえ(笑)。今後、こういう作品を作ってみたい、といった思いは?

貴島:「みんな頑張らなくて大丈夫だよ」っていう作品を作りたいです。

――楽しみにしています! 最後に、この作品を通して届けたいメッセージをお願いします。

貴島:第7、8、9話を観ていくと、『unknown』というタイトルに込められた意味に、気づいていただけるかなと思います。私たちは遠くの誰かのことはもちろん、大切な誰かのことも案外知らなくて。自分にとって未知の存在や、自分と違う存在を「怖い」と否定したり、憶測したり、傷つけたりしてしまいがちだけれど、愛するために理解できたらいいな、と。このドラマは、生きにくい世界を必死で生きている全ての吸血鬼な人たちに贈る応援歌なので、犯人の考察も楽しんでいただきつつ、最後は“愛の話”であることが伝われば嬉しいなと思います。

■放送情報
『unknown』
テレビ朝日系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:高畑充希、田中圭、町田啓太、麻生久美子、吉田鋼太郎ほか
脚本:徳尾浩司
監督:瑠東東一郎、金井紘
音楽:河野伸
ゼネラルプロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日

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