『どうする家康』板垣李光人のいたずらっぽい笑顔に釘付け “心”に訴えた毎熊克哉の名演も
かつて信玄は「弱き主君は害悪なり。滅ぶが民の為なり」と家康に伝えた。クーデターを起こした弥四郎は、終わらない戦を続ける徳川勢を「沈む船」と称した。弥四郎にとって家康は害悪な弱き主君なのだろう。だが虎松の目には、物笑いの種になっているとはいえ、家康が民に笑顔をもたらす者として映っていた。弱き主君と称される家康こそ民の為になる。虎松の決意が家康の未来と安寧の世を予感させる場面となった。
そんな虎松には、これまで家康に仕えてきた個性豊かな家臣団に決して埋もれない個性がある。愛嬌のあるふてぶてしさだ。虎松は「武田に行ったらすごいのがいっぱいいて出世できそうにありません」と正直なところを打ち明けると、「こっちは変ちくりんなのばっかりで」と口にした。「もう少し由緒ある家臣がいた方がよいでしょう? 井伊家のおいらとか」と話す顔つきはこ憎たらしいが、決して憎めない。
忠勝、康政(杉野遥亮)とともに岡崎へ向かった際には、虎松は見事な立ち回りで家臣たちを制していた。が、血気盛んな虎松は内通者である八蔵にも容赦がなく、康政に一喝される。年長者である康政にもふてぶてしく、康政が思わず「あん? 誰に口利いてんじゃ。あほたわけ!」と荒々しい口調になる場面もあったが、虎松は気にも留めていなかった。
家康が「(虎松は)使えそうか?」と問い、忠勝と康政が納得いかない表情で「はあ〜、ああ、まあ」と答える場面は面白い。虎松を演じている板垣のいたずらっぽい笑顔とキリリとした面持ちのギャップにはワクワクさせられる。虎松が今後度々トラブルを引き起こす予感もするが、家康にとって心強い味方が増えたことには違いない。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK