『あなたがしてくれなくても』は単なる不倫ドラマではない 惹きつけられる3つの理由

『あなたがしてくれなくても』魅了される理由

 毎週木曜日に放送されている『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)を楽しみにしている。このドラマのどこに魅力があるのだろうと考えていたら、恋愛ドラマに求められる方向性の違う要素が、幾重にもなって盛り込まれているからではないかと思った。

 恋愛ドラマに求められるもののひとつとして、少女漫画原作ものなどに多く見られるのが、主人公ふたりが、お互いに好きな気持ちはあるのに、くっつきそうでくっつかないというものがあるだろう。『花より男子』(TBS系)のような作品がそれである。

 恋愛ものの連載漫画、特に若い世代向けのものは、主人公ふたりがハッピーになったところで終わってしまうという性質のものが多い。それを終わらせないためには、くっついたと思ったら、勘違いだったと発覚したり、こっちは好きなのに、相手の気持ちはそうでもなかったりということを繰り返しながら、何話も何話も話を重ねていくようなスタイルになる。その中には、使い古された言葉ではあり、今でも多くのドラマに求められ続けている「キュンキュン」が盛り込まれたりする。

 『あなたがしてくれなくても』も、大人の恋愛ドラマではあるが、気持ちが近づいたり離れたりを繰り返す作品になっている。それは、2組の夫婦の不倫の話であるということは大きいだろう。不倫の恋が始まるところからドラマがスタートすることで、恋愛を新たに始めるキラキラした部分も描かれる。その上、お互いにはパートナーがいて、その関係性は修復はしがたいところにまで来ているが、決して壊したいわけではない。だから、登場人物は、新たな恋愛感情を抱いたとしても、気持ちをセーブする面もあり、くっつきそうでくっつかないという状態が自ずと続くことになる。

 こうした、どっちに転ぶかなかなかわからないところが、ドラマの続きが気になってしまう理由のひとつとなっている。

 また、本作ではそれと同時に好きの先にある感情も描いている。大人の恋愛ドラマや映画で求められるものとして、実際に長くつきあったり、同棲したり、結婚したりすることになってから、見えてくる倦怠期のあるあるをリアリティをもって見せたり、痛みとともに過去をふりかえったりするものがある。坂元裕二の『花束みたいな恋をした』のような作品がそうだと言っていいだろう。

 そんな作品は、キュンキュンを重要視するのではなく、どちらかというと、単純に好きというだけではどうにもならない時期のヒリヒリした空気を見せるものが多かったり、傷つけようと思っているわけではないのに、傷つけあったりするところも描かれる。時に登場人物が言ってはいけない言葉をぶつけたりもする。こうした感覚は、視聴者にも共有されやすい。

 『あなたがしてくれなくても』でも、2組の夫婦のセックスレスを描いていることもあり、さきほど書いたような、好きとか嫌いとかを通り過ぎたところにあるさまざまな気持ちも描くことになっていて、観ていていたたまれない気持ちになるような部分もある。

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