『らんまん』と『南総里見八犬伝』に共通点? “自分らしさを発見する”構成の見事さ

 『らんまん』で8人、主要メンバーになるとしたら誰か。万太郎は当然のこと、寿恵子、田邊……。竹雄(志尊淳)も欠かせないだろう。高知で出会い、東京でも手を差し伸べてくれた佑一郎(中村蒼)も。万太郎が信乃、現八が佑一郎。下男だった犬川荘助が竹雄。妾の子・毛野が寿恵子だろうか。寿恵子は信乃の恋人・浜路(演者が浜辺だし)かなと思う八犬伝ファンもいるが「八犬士になりたい」のだから毛野だろう。……なんて、想像を膨らませてドラマが2度美味しく楽しめるところも『らんまん』が豊かな物語である証だ。

 万太郎が「植物学者になる!」とことあるごとに宣言するのは『ONE PIECE』の「海賊王に俺はなる!」みたいでキャッチーである。『らんまん』はエンタメの王道なのだと思う。主人公が真っ直ぐ信念を貫いて、それに賛同する者たちが集まってきて、主人公と共に歩むことで仲間たちの生きる意味も照らされていく。

 誰もが自分らしく生きていく、その自分らしさを発見する物語。田邊が万太郎と初めて会ったとき「Who are you?」(君は誰だ?)と英語で問いかけた。田邊がバイオリンを弾いていた部屋に置いてあった『ハムレット』の冒頭は「Who's there?」(そこにいるのは誰だ?)からはじまる。単純に、夜、城の警備をしていて、暗闇で出くわした人が誰か確認するセリフではあるのだが、この「誰だ?」をもうちょっと拡大して解釈することも可能である。見えないもの、未知なるものを確認するという意味にも考えることもできるわけだ。この花はどういう花か? このひとはどういうひとか? 自分が何者であるか? 不確かなものを明確にすることは、植物学にも、人生においても極めて重要な行為である。

 田邊を感心させた万太郎の植物画の画力も然り。万太郎は目の前の植物を正確に写実する。それによって細部が認識できるのだ。万太郎のまなざしは、植物も、人間も、なにものなのか、ありのままに正確に認識するのである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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