『【推しの子】』は“重曹ちゃん”の成長物語だ アイドルとして最強の有馬かなが愛おしい

 赤坂アカと横槍メンゴによる漫画を原作としたTVアニメ『【推しの子】』が放送中。個性豊かなキャラクターたちの中で、今一番注目したいのが、元天才子役の有馬かな(CV:潘めぐみ)だ。

 第4話で、作中で人気の少女漫画『今日は甘口で』(以下『今日あま』)の実写ドラマでアクア(CV:大塚剛央)と共演した有馬は、相手役の俳優の下手過ぎる演技に絶望しながらもあきらめずに努力し、アクアのアシストで見事な演技を見せた。そして有馬ファンを一気に盛り上がらせたのが、最終カットの“主人公に恋に落ちたヒロインの顔”の演技である。有馬のほんのり色づいた頬と、大きく見開かれた瞳はまさに恋に落ちたヒロインそのものであり、有馬本人のアクアへの感情とリンクしていることは想像に難くない。

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 さらに、その後の打ち上げでアクアにそれとなく恋人の有無を確かめたり、アクアから「かわいい」とストレートに褒められて嬉しさを隠しきれていない様子もなんとも微笑ましい。有馬かなはアニメにありがちなツンデレ美少女というわけでもなく、ただただ不器用で頑張り屋な女の子なのだ。恋にも仕事にも真っ直ぐで、頑張りすぎるが故に空回りしやすい。そんな有馬かなが愛おしくて仕方ない。『今日あま』の流れをきっかけに有馬推しが確定したファンも多いのではないだろうか。

 仕事面において、天才子役に“元”が付く理由にもそんな有馬の不器用さが表れている。演技に対する強い思いがありながら、自分の態度が原因で周囲の人間が離れていった経験を持つ有馬は、「私より演技のうまい子どもはいて、それでも私を使う意味」を考えるようになったと話す。一見、芸能界ならではのキャスティングにまつわる悩みのようにも聞こえるこのセリフだが、よく考えればあらゆる仕事に共通する核心をついた言葉でもあるように感じられた。プライドの高い有馬が“協調性やコミュニケーション能力を軽視しない”という大人の対応の重要性に気がつくまでの過程を思うと、有馬がさらに愛おしく感じられる。

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一度でも本気で「アイドル」という存在を推したことのある人はわかるだろう。ステージに立った時に彼らが放つ、目線も心もすべて奪われる…

 自分の過去の失敗を真摯に受け止め、反省し、成功への道筋を作る。元天才子役と言われている有馬だが、実は彼女は真の天才ではなく、努力の天才なのではないかと思う時がある。本作における真の天才の象徴はアイ(CV:高橋李依)であり、素のままで人の目を引く力と対比するかのように、有馬が長年の経験から学んだ現場作りの力が光っている。そう考えると、アイの子どもでありながら「自分には才能がないから」と、常に冷静に場を見定めているアクアとの共通点も見えてくるのではないか。

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