『らんまん』牧瀬里穂の華麗な経歴を振り返る 東京編はまつの複雑な心境が見どころに
万太郎(神木隆之介)の東京生活が始まった『らんまん』(NHK総合)第6週。上京して早々、大事な荷物を盗まれたのはまさに怪我の功名。結果的に万太郎は慣れない暮らしの中でもホッとできる住まいと顔なじみを得ることができた。そして、何よりの幸運は万国博覧会で一目惚れした寿恵子(浜辺美波)との再会である。
和菓子屋の店先で互いの名を伝え合う2人。いつあの人が店から出てきて、「ヒューヒューだよ!」と言うだろうか……と期待してしまったのは筆者だけではあるまい。あの人とは、寿恵子の母・まつを演じる牧瀬里穂だ。
まつは娘の寿恵子とともに東京・根津で和菓子屋「白梅堂」を営む女主人。万太郎と竹雄(志尊淳)が参加した博覧会にも屋台を出しており、4月19日放送の第13話で初登場となった。あれから約1カ月ぶりに顔を見せ、その見目麗しさに改めて注目が集まっている。
演じる牧瀬は1989年に武田薬品工業が主催する「ミスビタミンCハイシーガールコンテスト」で2100人の中から見事グランプリに選ばれ、芸能界入りを果たしてから今年で34年となる。宮沢りえ、観月ありさとともに“3M”と呼ばれ、90年代に活躍した牧瀬。当時の勢いを知らない若い人たちも彼女が出演したJR東海「クリスマス・エクスプレス」の有名なCMはどこかで目にしたことがあるのではないだろうか。
同CMで、クリスマスプレゼントを抱えて新幹線で故郷に帰ってくる恋人を迎えに行く女の子を演じた牧瀬。そのバックには山下達郎の楽曲「クリスマス・イブ」が流れており、声は一切聞こえないが、彼女の弾むような足取りと息遣いで久しぶりに恋人と会える喜びが画面からひしひしと伝わってくる。あれで、まだデビューから1年も経っていなかったというのだから驚きだ。
役者としてはデビュー後すぐさま『東京上空いらっしゃいませ』と『つぐみ』の2本で映画の主演を務め、「毎日映画コンクール」をはじめとする国内の映画賞で新人賞を総なめに。1992年には舞台『飛龍伝92』で初代の富田靖子に続き、伝説のヒロインとも呼ばれる神林美智子を演じ、演出家・つかこうへいの下で鍛えられている。
そんな彼女の代表作と言えるのが、稲垣吾郎演じる過去に兄の死を招いた青年・純平と恋に落ちる主人公の夕希を演じたドラマ『二十歳の約束』(フジテレビ系)だ。冒頭で挙げた「ヒューヒューだよ!」という台詞は、純平に恋人がいると知った夕希が強がって言ったもの。当時まだ生まれていなかった筆者がなぜこの台詞を知っているかといえば、牧瀬と同年代の母親がよく口にしていたからである。それほどインパクトのある台詞として人々の脳裏に刻まれているのだろう。