『ペンディングトレイン』深みが増す赤楚衛二の弱さ 山田裕貴とのハグに目頭が熱くなる

 ここにきて大きく状況を覆す出来事が起きる。『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系/以下『ペンディングトレイン』)の第4話では、直哉(山田裕貴)と優斗(赤楚衛二)の関係にさらに良い変化が起きる。だが2人が絆を深める姿に安堵するのも束の間、思いもよらぬ事態が直哉らを待ち受けていた(以下、ネタバレを含みます)。

 加藤(井之脇海)が何者かに刺されたことによって、この世界にいるのはこの車両の人々だけではないことが明確になる。さらに加藤の傷は深く、生き延びるには麻酔も薬もない状態で縫合をするしかなかった。この状況での治療に尻込みする優斗。すると直哉がリスクを顧みず命を救おうと縫合に挑戦し、加藤は無事に生き延びることに。だが優斗の心には、自らの過失で先輩消防士の高倉(前田公輝)に大けがを負わせた事故のことが浮かび上がる。責任を感じ、もっと皆の役に立たなければと塞ぎ込む優斗を救ったのは、直哉だった。そんな中、直哉、優斗、紗枝(上白石萌歌)の3人は自分たちが乗る5号車の他に、6号車もこの世界に飛ばされていたことを知るのである。

 これまで乗客を牽引し、リーダー的存在として指揮をとってきた優斗は、加藤の治療に踏み切れなかったことに悔しさを滲ませる。過去の出来事と重なり、責任や重圧を一身に背負ってしまった優斗は、もっと人の役に立ちたいと無理をしてしまうのだ。赤楚はそんな優斗を、いつもの頼もしいリーダー像とはうって変わって、焦りや後悔を全面にすることで表す。繰り返される“火起こし”のシーンでは、背中を丸め何度も何度も棒を両手でこすりあわせる姿に優斗が抱える葛藤が見て取れ、切なさが込み上げてきた。悔しさに歪む表情や、余裕のなさから紗枝の言葉に強い口調で言い返してしまう姿など、人間なら誰しもが持つ“弱い部分”を丁寧に描写していくことで、作品はより深みを増すだろう。

 さらにそんな優斗にそっと寄り添っていたのが山田裕貴演じる直哉だ。最初のうちは優斗と相性が悪く、反発し合うことも多かった直哉。しかし責任を1人で背負い込もうとする優斗に対して「1人で背負うな。俺らでやってくんだよ」と声をかけ、気負いすぎる優斗が前に進めるようにとそっと導くのであった。主人公でありながらアナーキーな存在として描かれがちだった直哉だが、第4話にきて“兄”らしい安心感を評価する乗客の声が聞かれ、さらには車両の人々の人間関係をそっとサポートするような様子も見られる。また、美容師として髪を切ってあげるなど、人々の心をそっと軽くするような一面も。山田が芝居の中で見せてきた掴みどころのなさが良い伏線となり、車両の人々が直哉に抱く感情と、視聴者が抱く感情がシンクロする回となっただろう。

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