パク・ジニョンが進化した演技力を披露 『聖なる復讐者』は“力のない被害者”に光を当てる

 復讐の舞台となるのは、少年院という閉ざされた小さな社会。そこには、集団によるいじめや暴力、大人さえも加害者となり、社会の階級によって法が操作される大きな闇が映し出される。いじめのリーダー格であるジャフン(ソン・ゴニ)の子分、ファンを演じたキム・ドンフィは、『不思議の国の数学者』で主演を務めた若手俳優。被害者でありながら加害者でもある立ち位置で、複雑な感情を表現する重要な役どころを務めた。狂犬と呼ばれる教師ハン役のホ・ドンウォンは、『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』でも同じく教師役で小児性犯罪者を演じていたのが記憶に新しく、本作でも不快感を倍増させる演技を見せる。

 そして、少年院でイルを唯一味方してくれる教師スヌに扮するのはキム・ヨンミン。日本では『愛の不時着』(2019年)の北朝鮮の盗聴兵士役で知った人も多いだろう。一方で、『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』(2018年)で演じた、主人公の妻の不倫相手役も印象深い。教師のスヌは、両親のいない家庭を訪問するボランティア活動をしており、ウォルとも面識があり、イルの怒りや悲しみに同情する。天使と悪魔の両面を操るキム・ヨンミンがイルの復讐にどうやって介入してくるのか、その結末も見逃せないポイントだ。

 原作はチュ・ウォンギュの同名小説『クリスマスキャロル(原題)』。選択肢がない弱者、復讐の機会さえ与えられない“力のない被害者”にスポットが当てられた。権力もお金も知恵もない18歳の少年の復讐の末路はたがが知れている。本作は爽快な復讐劇でも、明快な答えがあるわけでもなく、目をつむりたくなるような残酷な現実を見せつけられ、ずっと息苦しい。だが、それもすべて原作者や監督の狙い通り。最後に私たちは、明日へと続く小さな希望の光が差し込む瞬間をこの目で見ることになる。

 クリスマスは幸せな日だと当たり前に思っていた。けれど、こんなにも悲しく、誰かの助けを求める“クリスマスキャロル”の曲が存在することを本作は教えてくれる。

■公開情報
『聖なる復讐者』
シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて公開中
監督・脚本:キム・ソンス
原作:チュ・ウォンギュ
出演:パク・ジニョン(GOT7)、キム・ヨンミン、キム・ドンフィ、ソン・ゴニ、ホ・ドンウォン
配給:アット エンタテインメント
2022年/韓国/韓国語/130分/シネスコサイズ/英題:Christmas Carol
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公式サイト:seinarufukushusha.com

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