『合理的にあり得ない』水野美紀は裏切らない 天海祐希との演技バトルに喝采

 「元に戻したいんです」とその依頼人は言った。『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)第4話では、怪演女優の火花散るやり取りに目が釘付けになった。

 物語は8カ月前にさかのぼる。依頼人に暴行をふるって弁護士資格を失った上水流涼子(天海祐希)が「上水流エージェンシー」を立ち上げた直後。後輩弁護士が連れてきた真紀(市川由衣)は美容整形で失敗し、報復を望んでいた。美容家の愛原樹里亜(水野美紀)が院長を務める「マジェスティックビューティーラボ」に乗り込んだ涼子だったが、「弁護士でもないくせに、偉そうに法律振りかざして講釈垂れてんのさ」と、あえなく追い返されてしまった。

 登場した瞬間、画面の人口密度が急激に上がる。そう思うのは錯覚だが、良い意味で存在感の強い2人は画面の真ん中がよく似合う。天海祐希と水野美紀の共演は、長い芸歴に対してほとんどなかった。水野が「尊敬する大先輩」と慕う天海との共演は、期待を裏切らない。金満ぶりが伝わるゴージャスな登場シーンにはじまり、良い意味で遠慮がなくオーバーアクションで互いの100%をぶつけ合う演技バトルは、視聴者が望んでいたものだった

 第4話では、久実(白石聖)が聞き出す形で涼子の前日譚が語られる。貴山(松下洸平)と出会ったのも同じ頃。樹里亜の攻略に頭を悩ませていた涼子の前に現れたのが、前髪を下ろした貴山だった。飼い猫のミーちゃんが縁となって、涼子にスカウトされた貴山は、秘書の面接を受けにラボに乗り込む。IQ140、語学堪能、ルービックキューブの達人で、ちょっとずれたところも魅力になる貴山は、樹里亜の心をつかんで見事合格。かくして上水流エージェンシーのスパイとしてラボに潜り込んだ貴山は、不正の証拠をつかんだかに見えた。

 ここまで観てきた方はお気付きかと思うが、涼子は基本的に出たとこ勝負である。扮装とハッタリ、いざとなれば腕力で勝負する涼子にとって、貴山は頼りになる相棒というレベルを超えている。“戦術貴山”状態の涼子がもし貴山に出会わなければ(ミーちゃんが迷子になっていなければ)、上水流エージェンシーは早々に潰れて、涼子は路頭に迷っていただろうと想像する。

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