『らんまん』宮野真守の迫力ある演技に脱帽 万太郎はタキの金言と共に前に進むしかない

 集会条例違反で警察に捕まってしまった万太郎(神木隆之介)。「自由」を求めるものがこの時代、どのようにしてその志を踏み躙られてきたか痛感させられる『らんまん』(NHK総合)第22話だった。

 声明社の集会に参加し、確かに演説をしてしまった万太郎は罰金または禁錮の罰を加えられる可能性がある。急いで竹雄(志尊淳)はこのことをタキ(松坂慶子)に知らせるために、一晩中をかけて「峯屋」に戻った。転んでも、足を挫いても、息を切らして万太郎のために先を急ぐ姿。本作を通して、志尊淳の演技力にますます拍車がかかる。

 演技といえば、今回は誰もが渾身のパフォーマンスを打ち出していた。特に逸馬を演じた宮野真守の迫真さには度肝を抜かれた。もともと声優として人気も高く、近年は俳優としての活躍も目立っているが、逸馬役でまた新たな顔を見せてくれたよう思う。万太郎が誤解を解こうと何度も警官に掛け合うが聞いてもらえず、最終的に拷問している逸馬に万太郎が仲間であることを“証言させようとした”。警察が彼らの都合の良いように嘘の供述をさせようとするシーンは、これまで本当に多くのドラマで描かれ続けている。登場人物の身に起きる不幸が他人事に思えなくなると同時に、腐敗する権力に対する痛烈な批判の意が込められているが、宮野は逸馬を通してその感情を一層高めることに成功した。

 

 警官からは万太郎を仲間だと証言すれば拷問をやめると言われていたが、逸馬は一切の迷いなく彼を守ろうとした。その間、万太郎がどれだけ憎いか履き続ける。警官を信用させるための演技だといえ、その説得力の高さに余計胸を痛めてしまう。万太郎にとっても逸馬にとっても互いはようやく出会えた、“仲間”であり、自分にとっての“自由”を体現する者である。その“自由”を逃すためとはいえ、逸馬だって辛かったに違いない。万太郎も、彼のやっていることを理解していたから悲痛の表情を浮かべていた。声色を何度も変えながら万太郎を罵る逸馬の演技は、宮野にしかできなかった素晴らしいものである。

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