ケイト・ブランシェットがタクトを振るう トッド・フィールド監督『TAR/ター』本編映像
5月12日に公開されるケイト・ブランシェット主演映画『TAR/ター』の本編映像が公開された。
本作は、『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』でアカデミー賞脚色賞に連続ノミネートされたトッド・フィールドが、16年ぶりの新作として監督・脚本を務めた最新作。第95回アカデミー賞では、作品賞をはじめとする主要6部門にノミネートされた。
ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命された指揮者リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、天才的能力と、たぐいまれなるプロデュース力で、自身を1つのブランドとして作り上げてきた。しかし、のしかかる重圧、過剰な自尊心、仕掛けられた陰謀により、彼女の心の闇は少しずつ広がっていく。
公開された本編映像は、ブランシェット演じるターがオーケストラへ指導する様子を切り取ったもの。ターはベルリン・フィルで唯一録音を果たせていないマーラーの交響曲第5番を、自らの指揮で遂に来月ライブ録音、発売する予定だったが、敬愛する師匠バーンスタインでさえ叶えられなかったその“大仕事”を自らが果たすというプレッシャー、そして高揚感にもどっぷり心酔するかのように、ドイツ語、英語、伝えたい感情によって言語さえも使い分けながらメンバーを叱咤激励する。そんな中、ふと笑顔を見せるター。その視線の先にいるのは、今彼女が惚れ込んでいる新進チェリストのオルガだった。だが、パートナーであり、バイオリニストのシャロンは良い気分がしない。
天才的な芸術家ターを演じるため、指揮のみならずドイツ語とアメリカ英語をマスター、さらにはピアノとカースタントもプロフェッショナルから本格的に学び、すべての演奏シーンを自身で演じたブランシェット。なお、フィールド監督のこだわりにより、ブランシェットの話すドイツ語には日本語字幕が付いていない。
監督を務めたフィールドは、「ケイトは、昼間に別の撮影があっても、夜になると僕に電話してきて、そこからさらに何時間も準備に費やすんだ。ドイツ語とピアノも習得して、演奏シーンはすべて彼女自身が演じている。リサーチに至るまで本当に抜かりないし、彼女はまさに独学の達人だね。制作期間中はろくに睡眠もとらなかった」「1日の撮影が終わると、ピアノに直行するか、ドイツ語とアメリカ英語の指導を受けに行くか、指揮棒の振り方を教わりに行っていた。撮影がない日には、アレクサンダー広場にある環状交差点と全く同じ寸法の競馬場に行ってリハーサルを行い、スタントマンが運転する8台の車に囲まれながら、時速100キロで滑走した。皆が目指すべき水準を示してくれて、僕たちは彼女についていくのに必死だったよ」と、ブランシェットに惜しみない賞賛を送っている。
さらに、ブランシェット自身も、狂気的でありながら魅惑的なターという人物について、「ターには権威のある地位に就いている人特有の不可解さがある。それを、どう表現するかがカギとなった。観客がターの体験に共感できるような場面を作ることも重要だった」「彼女は、自分のことをあまり分かっていない人だから。女性指揮者は往々にして、室内楽曲をあてがわれて、大作は任されない。それで彼女はがっかりしてしまうの。彼女はこの世界に浸透した慣習に疲弊した結果、賢明とは言えない決断を下してしまう」と解説している。
■公開情報
『TAR/ター』
5月12日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
監督、脚本:トッド・フィールド
出演:ケイト・ブランシェット、ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス、マーク・ストロング、ジュリアン・グローヴァー
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
撮影:フロリアン・ホーフマイスター
編集:モニカ・ヴィッリ
配給:ギャガ
アメリカ/2022年/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/159分/字幕翻訳:石田泰子/原題:Tár
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公式サイト:https://gaga.ne.jp/TAR