『らんまん』松坂慶子演じるタキが告げた衝撃の事実 愛があっても“心”がない切なさ
佐川に帰ってから、当主として好きなことを諦めようと務めてきた万太郎(神木隆之介)。『らんまん』(NHK総合)第17話では、彼だけでなく綾(佐久間由衣)の心も押し殺させる展開になってしまった。
いつからこの歪みが始まってしまったのか、わからない。「心が震える先に、金色の道がある。その道を歩いていったらええ」と蘭光(寺脇康文)に教わった万太郎は、東京で道を見つけた。しかし、自ら目を閉じ、心を閉ざすことになってしまう。当主として求められる振る舞いをする彼の異変に気づくのは、自分の発言に思い当たる節がある竹雄(志尊淳)だけ。そんな彼から「若、草花を嫌いになったわけではありません」と聞いたタキ(松坂慶子)は万太郎に用事を頼んだ隙に、彼の部屋に入り込む。
帰ってきた万太郎、そして綾を呼び出したタキは2人に「夫婦になれ」と告げた。以前、ヒサ(広末涼子)に“綾の母親になってくれてありがとう”と感謝を伝えていたシーンが印象的だったが、やはり綾は万太郎の本当の姉ではなく、実はタキの娘の子供だったのだ。第1週から言及されていたタキの夫、ヒサの夫に加え綾の両親の死の原因がコレラであることも明かされる。いとこ同士の結婚は、この時代よくあることだったらしい。しかしこれが単なる“いとこ同士の結婚”として語れないのは、万太郎と綾に姉弟として過ごした月日があるからだ。
「私たちにも心がありますき!」
理屈では可能なことだって、“心”がそれに耐えられない。綾の言葉にタキはショックを受けた様子で、2人の存在が歪だと言う。その言葉が、以前彼女が冗談のように言っていた“万太郎と綾を足して2で割りたい”発言を思い起こさせた。当主の万太郎は家業に身が入らず、綾は酒蔵に入ることさえ許されない女子なのに家業に専念している。タキは、本当はそれぞれに好きなことをさせてあげたいのだ。万太郎に草花の研究をさせると同時に綾に家業をさせるために綾に婿を取らせたとしても、分家からすれば万太郎ではない赤の他人が当主になることに納得できないはず。万太郎が誰かを嫁に貰ったとしても、依然として彼が当主の務めを果たさなければならず、草花の研究はできない。万太郎の部屋の様子を見て、寝られない彼の心配をした上での結論だったはずで、そこにタキなりの愛があっても“心”がないことが切ない。むしろ、これまで1人で本家として分家と戦ってきたタキにとって、“心”を殺すことはあまりにも当たり前のことだったのかもしれない。