連続テレビ小説『らんまん』（NHK総合）の第3週となる「ジョウロウホトトギス」が放送された。成長した万太郎（神木隆之介）たちが本格登場した第3週では、早くも恋の予感を思わせる出来事が。今回は、万太郎、綾（佐久間由衣）、竹雄（志尊淳）の淡い恋心について振り返っていきたい。

　峰屋の酒を内国勧業博覧会の清酒部門に出品するため、はるばる東京にやってきた万太郎と竹雄。酒に酔って木に登っていた万太郎は、地上から「危ない」と声をかけてくる娘に目を奪われる。それは万太郎がかるやきを買った屋台の菓子屋「白梅堂」の娘・寿恵子（浜辺美波）であった。これまで植物にばかり夢中で“おなご”には一切の興味を示さなかった万太郎だが、寿恵子に対しては「心が震えた」と一瞬で恋に落ちた様子。「あんなにかわいい人がこの世におるがじゃのう……」とすっかり夢中だった。だが万太郎には峰屋の当主として腹をくくらねばならない時が来ていた。大好きな植物の研究のために上京することが叶わない中、万太郎は東京への思いと共に寿恵子のこともあきらめようとしていた。恋する万太郎のキラキラとした瞳に、幸せのおすそ分けをもらったような気持ちになったものだが、週のおわりには一転、切なさに胸を締め付けられる。神木の素直な表現が大きく視聴者の心を動かした週だった。

　幼いころに酒蔵に入ろうとして強く戒められた綾。その時に落としたかんざしを拾って持っていてくれたのが、峰屋の蔵人の幸吉（笠松将）だ。時を経て再会した2人は、新しい辛口の酒造りを通して絆を深める。当時のかんざしが幸吉の手から綾の元へわたる瞬間のロマンチックな物語が印象的だった。縁談がたくさん舞い込む綾だが、なかなか峰屋を離れる気持ちになれないのは酒造りがしたいから。「綾様が今も酒造りを好きでよかった」、そう声をかける幸吉は綾の唯一の理解者だろう。酒造りへの想い、幸吉への想い、それらが簡単に許されるものでないことは綾にも分かっているはず。その心中はさぞ苦しいものだろう。佐久間由衣の表現する切ない恋心がじんわり心に染みる。

　忘れてはならないのが、竹雄が抱える綾への想いだ。小さいころから綾と2人で万太郎を支えてきた竹雄。当主を支える者として、いつだって真っ直ぐな心で万太郎や綾と向き合ってきた。だが綾への特別な感情は、番頭の息子である竹雄にとって身分違いの恋であり、心に隠し続けなければならないものだった。綾と幸吉の仲睦まじげな姿を複雑な思いで見つめる竹雄だが、今後3人は三角関係へと発展するのだろうか。東京で綾によく似合うくしを手にした竹雄の思いつめたような表情が悲しくもあり、つい竹雄の恋を応援したくなってしまう。志尊淳の演じる竹雄からは健気さがあふれる。万太郎や綾にも使用人という関係以上の大きな思いがあることがひしひしと伝わってくるのだ。

　5日間の中に3人の恋模様が、ぎゅっと詰まった第3週。この関係性が万太郎や綾の人生から峰屋の将来に至るまで、どう影響を及ぼしていくのかにも注目が集まる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回（全26週）】
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作：長田育恵
語り：宮﨑あおい
音楽：阿部海太郎
主題歌：あいみょん
制作統括：松川博敬
プロデューサー：板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出：渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供＝NHK