『どうする家康』溝端淳平が最後に見せた“兄”としての微笑み 解放された今川氏真

 義元は織田信長(岡田准一)に敗れ、この言葉を氏真に直接伝えることは叶わなかった。けれど、義元は前々から励み続ける氏真を認めていたのだ。氏真の目に涙があふれる。糸は「もう……十分でございます」と氏真に寄り添った。勇ましく戦う氏真より、蹴鞠をする氏真の方がずっとずっと好きだという糸の言葉に、氏真は刀を捨てた。義元の心の内を知り、控えめながらもずっと氏真を支えてきた糸の存在によって、氏真はこれまで味わってきた劣等感や苦しみから解放された。

「余は妻と共に北条殿に身を寄せたい。力添え願う」

 こう家康に伝える氏真には、栄華を誇った今川家を思い起こさせる気品と、氏真元来の凛とした姿が感じられた。

「いつか私も……あなた様のように生きとうございます」という家康に、氏真はこう言い残した。

「それはならぬ」
「そなたはまだ降りるな」
「そこでまだまだ苦しめ」

 厳しい言葉とは裏腹に、氏真は優しい微笑みをたたえていた。兄として、そして亡き父の心の内を知り、家康が安寧の世をもたらす未来に思いを馳せる者としての姿だった。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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