皆がそれぞれの歩調でたどって来た道が、今、交わりはじめている。仕事も子育ても順調な舞の元に、刈谷（高杉真宙）から電話がかかってきた。彼は一歩一歩、空に向かって進んでいる。

　「あの倉庫の片隅にうずくまっとうのは、未来の空を夢見る翼とよ」と、空飛ぶクルマの開発を玉本（細川岳）と共に進めていた。玉本が学生時代のもじゃもじゃの髪と髭ではなくなって、一瞬「誰？　鶴田？（足立英）」と思ってしまった。それだけ青春時代から時間が経過している。刈谷は変わらない“ロマンチスト刈谷”ながら研究一筋の人らしく、いい感じに少しおじさんになっている。ビジュアルの良さをまったく気にかけていない人らしさがよく出ていて高杉真宙の観察眼＋再現力の高さを感じた。第25週の活躍に期待している。

　舞の出産と再び動き出す夢、祥子の病気と引退、めぐみの母を介護する覚悟……とわずか5回の間に盛りだくさん。子育て、仕事、介護、短歌、料理、町工場の再生、ものづくり、空飛ぶクルマと様々なジャンルが折り重なる、いわゆる近年のドラマが試行錯誤するジャンルミックスになっている。ホームドラマをほっこり観たい人にも、文化的な刺激を楽しみたい人にも、すてきな男子に癒やされたい人にも、社会問題に興味のある人にもフックのあるドラマ。

　『舞いあがれ！』ではそこに町工場や飛行機という工学的な題材を取り上げたところがポイントと感じるが、さらに、近い未来に実現しそうな空飛ぶクルマに目を向けたことで、長く続いたコロナ禍の鬱屈した毎日に風穴を開けてくれそうである。歴史を振り返ることも大事だし、事実に目を背けてはいけないけれど、そればっかりだとストレスが溜まるばかり。そろそろ明るい未来を夢見たい、『舞いあがれ！』はそんな気分を先取りしてくれている。その希望は、刈谷先輩にかかってる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』
2022年10月3日（月）から 2023年4月1日（土）まで
総合：8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作：桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽：富貴晴美
主題歌：back number 「アイラブユー」
制作統括：熊野律時、管原浩
プロデューサー：上杉忠嗣
演出：田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地：東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供＝NHK