遠藤憲一が『夕暮れに、手をつなぐ』で放つ大人の魅力 久遠と空豆の相互作用も見どころに

 黒のインナーにグレーと白のミックスカラーのセットアップ、その上から黒のコートを羽織って、さらにそこに合わせるのは黒のハットと、ブラウンも入ってるであろう暗めながら固すぎないサングラス。シンプルでありながら高級感のある洋服に、主張しすぎないシルバーのネックレスが映え、ハットから覗く、ゴールドともシルバーともいえない絶妙なニュアンスカラーの短髪がこれまたアクセントになっている。手に持っているコーヒースタンドのカップでさえアイテム小物のようだ。毎週火曜日に放送中の『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)にそんな姿で現れる久遠徹(遠藤憲一)が、とにかくカッコよすぎる。

 久遠は、空豆(広瀬すず)が雑用として働いている高級有名ブランド「アンダーソニア」のデザイナー。「サンダル、コンビのやつあったろうがよ!」「生地とかドレスはシーズンごと、コレクションごとにわかるように!」と周りのスタッフに怒鳴ったり、小言を言ったり、いつも何かとイライラしているが、その姿がかえって仕事への真剣さを物語っている。

 一方で、友人であり、大切な顧客でもある大ベテランの役者である犀賀(大友康平)がやってきた時はにこやかに対応し、ひょんなことから誤って突き飛ばしてしまった葉月(黒羽麻璃央)に即座に謝った。久遠は周りを振り回すこともあるが傍若無人ではなく、むしろ誰よりも常識や思いやりの気持ちを持っている人物なのだろう。葉月や香織(田中真琴)のような若いスタッフがめげずに彼についていこうとするのも、久遠の人間性があるからだろう。

 久遠を演じる遠藤憲一にとって、「口が悪く怖そうだけど、実際は優しい」という人柄の役はお手のものと言っていいだろう。『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』シリーズ(2019年、2021年/フジテレビ系)では、一癖も二癖もある診療放射線技師たちをまとめる技師長・小野寺俊夫を演じた。小野寺はそのコワモテぶりから初対面の人には怖がられる存在であったが、マイペースでちょっとぼんやりしているため、部下たちには「上司というよりこちらが世話をしてる」というような感覚が生まれていた。だが、いざというときは頼れる存在なので、バカにされるということもなく、全体のいじられ役として和やかな雰囲気を醸し出す一因となっていた。『魔法のリノベ』(2022年/カンテレ・フジテレビ系)では、まるふく工務店の社長であり、玄之介(間宮祥太朗)や竜之介(吉野北人)の父である蔵之介を演じた。派手な服装で飄々と明るい蔵之介は社長には見えないが、時にはしっかり指示出しをし、時には小梅(波瑠)や玄之介のことを気にかける包容力もみせる。まさに父でもあり、母でもあるような人だった。

関連記事